アーティストデビュー10周年イヤーを展開してきた小倉唯が、10年目最後の日となる7月17日に埼玉・大宮ソニックシティで『小倉 唯 Memorial LIVE 2023~10th Anniversary Assemble!!~』を開催。
約2年ぶりのワンマンライブということもあり、初披露曲とベスト・オブ・ベストの楽曲を組み合わせた内容に、観客も歴代最高と呼べるほどの盛り上がりを見せた。
ここでは昼夜二部制で行われたライブのうち、昼公演の模様をお届けする。
すべてが圧巻で圧倒的。今回のライブを経験した人はきっと誰もがそう感じたことだろう。まずは開演直前。舞台上のスクリーンに突如映像が映し出されると、そこには《いくよ!》《声に出してね!》と観客からのレスポンスを煽る言葉が踊る。これは、声援が解禁になったことで、今から始まるライブに向けてのコールのアイドリングを促すメッセージ。それに呼応するようにオーディエンスも声を上げ、会場のボルテージが高まったところで、いよいよオープニングへ。スクリーンが上昇すると、ステージ中央には一人たたずむ小倉唯の姿があり、待ちに待った2年ぶりのライブにひと際大きな声援が送られる。さらにイントロなしの『Baby Sweet Berry Love』が始まると、空気が激しく揺れるほどの歓声が会場を包んだ。
小倉唯(※提供写真) 画像 2/10 小倉唯(※提供写真) 画像 3/10 小倉唯(※提供写真) 画像 4/10
想像を遥かに超える熱気を彼女自身も感じたのか、オープニング曲を歌いながら、思わず声をつまらせるようなひと幕も見せる。しかしながら、ファンの熱狂ぶりはこれだけでは終わらない。続く『I・LOVE・YOU!!』でも、序盤から「Say!No?(せーの?)」「What’s joy?(わっしょい?)」のコールで会場が一つに。一方の小倉も、歌詞の一部を「会いたかったよー!」へと変えて叫び、いかに今日のライブを待ちわびていたかを歌にして届けていった。さらに、メロディが聞こえなくなるほどの爆発的な盛り上がりを見せたのが『Honey♥Come!!』だ。Aメロでのクラップ、Bメロでのコーラス、そして一緒に歌い上げるサビ。その完璧な一体感は、早くもこの日のハイライトと思えるほどだった。
登場からの怒涛の3曲を終え、最初のMCで「もうやりきった感じがする」と笑顔を見せた小倉。また、今回はアーティスト活動10周年を祝うアニバーサリーライブということで、様々な演出を用意しているとの発表も。なお、オープニングから着ている衣装もその企画の一つで、ファンから募集したデザインを採用しているとのこと。「『ポップでラブリー』というテーマにぴったりでした」と決め手となった理由を明かし、また、このデザインには今回のライブのコンセプトでもある『Assemble』(=集める/組み立てる)の意味が踏襲されており、「郵便屋さんをイメージして帽子やバッグとかも付いているのがすごくかわいいんです♪」とお気に入りのポイントも嬉しそうに語った。
「皆さん、振付動画、見てくれました? 一緒にかわいく踊れますか?」といたずらっぽい笑顔を浮かべて始まったのは『Caramel Ribbon...』。ライブ初披露となるこの曲を4人のダンサーたちと届けていく。キュートな振付に少しウィスパー気味の歌声がマッチし、甘い時間が流れた。続く『Happy Strawberry』もスイートな一曲。デビュー以来、ほとんどのライブでセットリストに組み込まれてきた、小倉 唯を代表するナンバーでもある。全身を使った激しいダンスと、アップテンポのリズムに合わせた早口な歌詞。それらを、息を乱すことなく可憐に表現する姿にパフォーマーとしての真髄を見た。
ここで一旦、ブレイクを兼ねた幕間映像が。「10’s Question みんなで答えをAssemble!」と題したコーナーがスタートし、これまでのアーティスト活動にちなんだ4択クイズを、画面越しの彼女と一緒にオーディエンスもペンライトの色で答えていく。なかには、目の前にリンゴ、イチゴ、レモン、パイナップルが並べられ、「次の4つのフルーツのうち、アートワークに使われていないものは?」という少し難易度が高めの問題もあり、それでも見事正解の「レモン」を当てるなど、両者とも高い正解率を叩き出していった。また、最後に出されたのは「過去の衣装でもう一度着てみたいものは?」という問題。映像のなかの小倉はしばらく悩んだのち、「どれもこだわりがあるから迷うけど……決めました!」と4択のなかから1つの衣装をセレクト。ところが、その回答映像にはボカシがかけられ、答えはお預け状態となっていた……。
ここからは事前にリクエストを募っていたカップリング曲の上位5曲をメドレーで展開。第5位に選ばれたのは『Sing-a-ling-a-Harmony』。曲タイトルの発表とともにステージに登場した彼女が着ていたのは、懐かしい浴衣風のドレス衣装。先ほどのクイズの答え合わせを生で見せるサプライズに、ファンから大歓声が起きる。続く第4位は『winter tale』。この曲は2018年の2nd LIVE TOUR「Platinum Airline☆」でしか披露していないレアなもの。しかしながら、完璧なクラップとコーラスを繰り広げるファンの姿に、隠れた人気ナンバーであることが証明された。第3位の『Hop Step Jump!』もライブで歌うのはLIVE TOUR 2019「Step Apple」以来。曲中で観客と一緒に何度もジャンプをする姿に思わず懐かしさが込み上げてくる。と、ここで残り2曲を届ける前に、ダンサーたちによる激しいダンスが展開。そのわずかな時間を使って小倉は新たな衣装へとチェンジ。彼女のライブでは欠かせない演出の一つである早替えを今回もしっかり取り入れているところがなんとも心憎い。そして、身軽になった姿で歌う曲といえば、当然アグレッシブなダンスナンバーだ。ファン投票で2位と1位に選ばれたのは『ガーリッシュエイジ』と『ドキドキラビリンス』。いずれもこれまでに幾度となくライブを盛り上げてきた人気曲。思えば、前半をキュートな楽曲でスタートし、早替えを挟んで、後半には激しいダンスを披露した今回のメドレーは彼女の真骨頂を流れるように魅せた構成で、まさしく小倉 唯のライブの一つの集大成と言えた。
後半は初パフォーマンスとなる『Clear Morning』でスタート。フューチャーベースのような装いもあるこの楽曲は、アーティスト・小倉 唯のイメージを大きく変えたシングルでもある。スローテンポで浮遊感のあるコンテンポラリーダンスは彼女自身による振付で、ダンサーたちと優雅なステージングを作り出していく。そうかと思えば、続いては一変し、超高速のダンスに超早口のラップをかけ合わせた『Fightin★Pose』を披露。また、イントロから会場が歓喜で包まれたのが『ta・ta・tarte♪』。この曲は、それまでイチゴ、チェリー、アップルと赤い果実をタイトルに用いてきたアルバムをすべて詰め込んだようなセルフプロデュースアルバム『Tarte』のリードトラックでもある。たっぷりのフルーツに酸いも甘いもすべての感情を乗せたタルトを作る様子を綴った歌詞だけに、ファンへのこれまでの感謝の想いを歌に閉じ込めて届けているようにも感じられた。
小倉唯(※提供写真) 画像 7/10 小倉唯(※提供写真) 画像 8/10
2つ目の幕間映像はアーティスト活動10周年を振り返るスペシャルインタビュー。デビューの話がきたときは「こんな自分で良いのか」という不安があったことや、それでも嬉しさがあり「やるからには全力を出そう」と決意したという当時の心境を包み隠さず語っていく。音楽活動を10年続けてこられたことについては、「母の言葉、そしてファンの応援に支えてもらったおかげです」と涙を浮かべながらに感謝の想いを。また、最後にカメラ目線で「皆さん、これからもついてきてくれますか?」と呼びかけると、会場は温かい拍手で包まれた。
「この先もまだまだ皆さんと見たい景色やビジョンがあります」。そんな彼女の決意を届けるようにライブは『Love∞Vision』で再開。レーベルを移籍して最初に世に送り出した曲であり、初めて彼女が作曲に携わったナンバーでもある。メロディを共作した俊龍と作詞の只野菜摘は、デビューシングル『Raise』を生み出した2人。小倉唯にとって大切な人たちと共に作り上げた“新たな第一歩”の曲だけに、歌に込めた思いがより強く伝わってくる。そうしたしっとりした空気を変えるように次に届けたのは『ハピネス*センセーション』。ここでも《未知の世界飛んでいく》《ハピネスなミライ》と未来への希望を表現していく。また、ステージと客席の上には無数のしゃぼん玉が飛び、それらはまるでこれからどこまでも舞い上がっていく、みんなの未来や夢を表しているようでもあった。
ショートMCを挟み、「まだまだアツくなるけど大丈夫?」の言葉に再び大きな歓声で応えていくオーディエンス。ここからはいよいよラストスパート。幕開けは「初めて披露するから私もドキドキしています」と話した『秘密♡Melody』。跳ねるようなメロディと軽快なステップが心地よく目と耳を刺激する。続いて大空の映像とともに歌い上げたのは『プラチナ・パスポート』。2nd LIVE TOUR「Platinum Airline☆」の表題曲だっただけに、当時のライブがフラッシュバックしたファンも多かったのではないだろうか。そしてラストは音楽活動の始まりとなったデビューシングルを。曲紹介の際、「小倉 唯で『Raise』」と自分の名前を点けて告げる姿からも、いかに彼女がこの曲を大事に背負い、歌い続けてきたかが伝わってくる。また、それを裏付けるように、自信を持って堂々と歌い上げる様子からは、改めて彼女が築いてきたこの10年の歴史を強く感じさせられた。
アンコールは、まさにこの瞬間を歌ったかのような『Dramatic!』を。《集めて 何度も夢見よう 一緒にね》の歌詞が今回のライブタイトルである『Assemble』とリンクしていく。また、ここで改めて10周年を振り返り、「皆さんの声援の力って本当にすごいんです。これからも応援したいと思い続けてもらえるような人でありたいなと思います」とファンに言葉を贈り届けていく。そして、全員の心が温まったところで最後の曲へ。やはりこのコールをみんなで歌わなければライブは終われない。「いっせーので 君とだけ!」で始まる『ハイタッチ☆メモリー』は、この日一番の盛り上がりを見せた。その後、曲が終わっても名残惜しそうにずっと残り、客席に手を振り続けていく。が、最後には「明日からの11年目もよろしくね!」とファンにこれからの活動を約束し、ステージをあとに。その言葉通り、夜の公演では11月23日にパシフィコ横浜で11年目初のライブを開催することも発表。この秋、さらに進化した彼女がどんな姿を見せてくれるのか楽しみに待つとしよう。