父親の影響で美容師になり、いくつかのサロンでキャリアを積み現在はOASIS南青山店でトップスタイリストとして活躍する渡部さんに目指す美容師像や、今後の目標について聞いた。
―美容師を目指したキッカケを教えてください。
父親が美容師だったのでその影響もあるんですけど、ちょうど僕が進路を決める時が、カリスマ美容師ブーム真っ只中で。その中で父親がすごくキラキラと輝いて仕事をしているのを見て、その姿に憧れたのもあり、美容師を目指そうと思いました。僕が美容師を目指すという話を父親にした時は、最初は渋られましたね。根性無しだと思われたのか「お前じゃ無理だよ」と言われました(笑)。僕は小さい頃から父親が仕事している姿を見ていたし、ちょうどその頃、木村拓哉さんが美容師を演じたドラマ『ビューティフルライフ』が放送されていて、等身大の美容師の姿が描かれていたので美容師が大変な仕事という認識はありましたね。まぁあまり深く考えないお気楽人間だったので、そのまま美容の専門学校に進学した感じです。
―専門学校卒業後はどのようにキャリアを積まれていったのですか?
3つのサロンを経て、今このOASISで働いているのですが、最初は某超有名カリスマサロンで、新卒でキャリアをスタートさせました。当時放送されていた、美容師が腕を競い合う『シザーズリーグ』という番組にも出ていたサロンだったので競争率も高く、何百人の中の20人とかで入り、最初は社会人の一般常識についてのセミナーを受けたりして、1週間後くらいに初めてサロンに立ちました。サロンでは最初に雑誌を覚えることから始まって。“雑誌を出すときにはお客様が履いている靴を見て判断しろ”なんていうことも習いました。僕は結構不器用だったので、シャンプーの試験も3ヶ月くらいかけてようやく受かったのですが、早い子は1〜2ヶ月で実際にシャンプーをしている子もいましたね。そこで3年くらい働いた時に、ストレスとかで髪が抜けてしまって、心身ともに弱ってしまい退社という形をとって。その後半年くらいフリーター生活をしていたんですけど、やっぱりキラキラしている美容師に戻りたいと思っていた時に、知り合いの知り合いの方が「新しくサロンを起ち上げるからやってみないか」と誘ってくださって、そこでまたアシスタントとして美容業界に戻りました。そこには6年在籍して、その中でカットもできるようになりました。今度はそのサロンが潰れてしまったので、別のサロンで4年間働いて。そのサロンはオリジナルの技術を売りにしていたので、イチからその技術を覚えないといけなかったんです。シャンプーの仕方も違うので、ハタチくらいの子にレッスンを見てもらったり、プライドも結構傷つきましたね(笑)。でもそこで学んだ技術が今の自分の技術にもなっているし、今はそれがすごく自分の強みになっています。ちょうどその時は僕自身も美容師として伸び悩んでいたので、新しいことを学んでより深く技術に入り込めた感じはありましたね。その後は、現在のOASISの別店舗に行って、そのお店が統合するということで、現在のお店で働くことになりました。僕自身、OASISは6年目くらいです。
―現在のお客様の層はどういった方が多いのですか?
年齢的には30代が多くて、意外と男性のお客様も多いです。OASISのお客様自体は女性と男性で8:2くらいなんですけど、僕自身は6:4くらいですね。長い方だと、13〜14年くらい担当させていただいている方もいます。得意なスタイルとしては、女性のお客様だと、ショートやボブ、それに合わせたパーマスタイルを手がけるのが好きですし、得意です。男性のお客様で言うと、最近は刈り込むのをトリマーでやってしまう人も多いんですけど、僕はイチからハサミで切るので、そのこだわりは結構強いですね。
―渡部さんが目指すサロン像、美容師像を教えてください。
今はやっぱりどうしてもコロナウイルスだったり、美容師になりたいと思って入ってきてもなかなか続けることができない時代だと思うんです。そういう人たちが安心して働ける、そこにいれば自分の夢が叶えられるという美容室を作っていきたいと思っています。やっぱり美容師になっても、実際は理想と現実が違って辞めちゃう子も多いんです。僕らが美容師を目指していた時ほど、美容師に対して魅力が感じられない時代にもなってきている部分もあるので、そういう意味では美容業界を少しずつ変えて、離職率も0という数字を目指せるようなサロン作りをしていきたいです。個人としては、やっぱり夢を与えられたり、影響力のある美容師になることが目標でもありますし、自分の使命だと思っています。
―美容師として大切にしていることを教えてください。
僕が、美容師として育てていただいた諸先輩方に言われたのは「髪を切るだけではなくて、髪を切った後のことまで考えなさい」ということで。お客様のライフスタイルに携わり、そこに寄り添うことができるのが美容師だと思うので、携わった方の日常を豊かにしていくことができたり、お客様が少しでも幸せになれるようなお手伝いをするということを、常に考えて仕事をしていますね。
―お客様の魅力を引き出すために見るポイントはどこですか?
輪郭や骨格、首の長さは、ほんとんどの美容師が見ると思うんですけど、僕的にはおでこを見ることが多いです。おでこの形や広さで、その人に合わせるデザインが結構変わってきたり、その髪型がその人に合っているかというのを見極める上で、おでこはすごく大事ですね。それで言うと、僕実は“ヘアループ”という特殊技術の特許を持っているんです。ファイバー状の毛をつける、簡単に言うと増毛なんですけど、エクステとは違って生え際とかにつけるタイプの付け毛で、それをつけることによって、人間の顔にある黄金比率に近づけて顔の形を綺麗に見せたり、小顔矯正に繋がることもあって。今まで美容師って、あるものを削るという引き算の考え方が多かったんですよ。それがヘアループは足し算で印象を変えることができるので、技術面としての幅が広がりやすくなったなと想います。東京でもこのヘアループの資格を持っている人は数人しかいなかったり、これ以外にもたくさんの技術が日々出てくるので、美容師は本当に日々勉強ですね。大変ではありますけど、“これができるようになった”というのもどんどん叶うので楽しいです。
―最近のトレンドを教えてください。
今年はマスクをする機会が多かったので、前髪や顔周りのデザインで遊ぶというのが流行ったかなと思います。例えば前髪の内側の色をブリーチで抜いて色を入れたり、マスクをつけて耳に髪をかけた時にちらっと見えるワンポイントとして色を入れたりというのが、今年っぽいものではありますかね。あとは“オルチャンヘア”。韓国の方の髪って結構ハイトーンカラーが多くて、日本では今年リモートワークもあったので、リモートだからできる髪色でハイトーンカラーに挑戦する人もいて、そういう普段よりも髪を楽しめるという意味ではすごく良い流れだったと思います。
―美容師としての今後の目標を教えてください。
僕は美容業界に20年近く携わっているのですが、美容業界って暗黙のルールというか、守らないといけないことが良くも悪くもたくさんあって。最近でこそ異業種とも交わるようになってきたと思うんですけど、他の業種と比べると閉鎖的な部分もあるんです。逆に言えばやり方が少し変わるだけで、もっと美容師という職業が広まっていく可能性があるということでもあるので、そういった中で美容業界の常識やルールを良い意味で壊していけるような美容師になりたいと考えています。
※営業時はマスクを着用し感染症対策をとっております。
<Profile>
渡部陽介(わたなべようすけ)
生年月日:1980/10/26
出身地:東京都
サロン:OASIS 南青山店
得意なスタイル:ショート、ボブ
渡部陽介Instagram:yosuke1026
OASIS HP:https://oasis-hair.com
OASIS Instagram:oasis3142