最後に参加したイベントは、埼玉・メットライフドームで行われたSKE48 24thシングル「Stand by you」の個別握手会だった。ファンとの絆を確かめる握手会が最終活動の場となった。当日は小畑の同期である7期生と、ほぼ同時期にグループに加入したドラフト2期生(通称7D2)から卒業アルバムを手渡される場面も。共に研究生から過ごしてきた仲間たちからのサプライズに、小畑は最後に涙を見せた。
3月26日に行われた小畑の卒業公演は、彼女らしく笑顔に溢れた公演となった。共に公演に参加したチームKⅡのメンバーたちは、小畑の選んだ未来を希望を持って送り出した。
「SKE48がピンチだった時颯爽と現れて、SKE48に明るいニュースをたくさん運んできてくれた子です」
2月の卒業発表を受けて、高柳明音は自身のブログで小畑についてこう綴った。
小畑がデビューした2015年は松井玲奈を始め、佐藤実絵子、中西優香、古川愛李とグループを初期から支えたベテランメンバーの卒業が相次ぎ、メンバーやファンの間で言葉にできない不安や焦りが漂っていた時期だった。それだけでなく、地上波テレビ放送への出演もほとんどなく、ライブイベントも行われない。
SKE48に未来はあるのか?
誰もがその問いに悩み苦しんでいた。
そんな時代に加入した7期生、ドラフト2期生には多くの期待が寄せられた。そんな中でグループの中で着々と『その時』の訪れを待つべく、小畑は存在感を表していく。若手メンバーによる選抜曲『制服を着た名探偵』のユニットメンバー入り。そして、松井珠理奈を筆頭に原点回帰を目指したユニット「ラブ・クレッシェンド」のメンバーに選ばれ、以降、SKE48内の人気ユニットとして成長していく。
そして、転機は突然訪れた。
何度も延期になっていた待望の2ndアルバムのリリースがようやく正式発表された。『革命の丘』と題したアルバムのリード曲『夏よ、急げ!』。歌詞の世界に広がる、まだ見ぬ「君」と紡ぐ新しい「夏」。まるで、新たな展開を予感させる内容に、CDを手にした誰もが希望を描いた。そして、SKE48が迎える新たな「夏」の答えは、すぐに軽やかなクラップと共にやって来た。
2017年7月。SKE48にとって久しぶりのサマーソングとなった21stシングル『意外にマンゴー』のセンターに小畑が選ばれた。初選抜&単独センターという史上初の大抜擢だった。今までにない程の追い風がSKE48の勢いを加速させていく中で、松井珠理奈に代わる新しいセンターの登場は必然だったのだ。
『意外にマンゴー』初披露の日、栄の劇場にこだました胸を弾ませるクラップに乗せて、センターに向かって颯爽と現れた小畑は、向けられるプレッシャーを跳ね除け、堂々と観る者に期待と安心感を与え、そして未来を感じさせるパフォーマンスを魅せ付けた。
「もう大丈夫だ」。当時取材していた筆者は小畑の姿を見て安堵したのを今でも覚えている。
小畑優奈 画像 5/6
小畑が先頭に立って走り続けたこの2年は、SKE48が10周年を迎え、新たなるステージへ進むための大きな転換期となった。
「1人の存在で 1人の女の子の生まれ持ったパワーで こんなにも何かが変わる瞬間を短い間だったけど何回も見てきました。」
高柳はブログで小畑についてこうも綴っている。
いまのSKE48があるのは小畑の存在があったからこそと断言してもいい。小畑の存在が悪い目のダイスをひっくり返すように、グループを良い方向へ導いた。まさに彼女は正真正銘の「アイドル」だった。その笑顔をもうステージで観ることができなくなるのは惜しい。次世代として、次のセンターとして、小畑の活躍をこれからも見てみたかったのは正直な感想だ。
小畑が見つけたアイドルとは違う未来。
新しい場所で自らの目標に向かう小畑の活躍と成功を願うばかりだ。