Photo by 稲垣謙一
4月2日・新潟・LiveHouse柳都SHOW!CASE!!公演からスタートし、名古屋、福岡、札幌、大阪を巡ったMaison book girl 初の全国ツアーが、5月9日・東京でファイナルを迎えた。
昨年の11月6日に行われたメジャーデビュー直前のワンマンライヴはshibuya WWW Xだったが、今回は赤坂ブリッツ。一気に広くなった会場の規模は、ここ数ヶ月で急速に高まったMaison book girlの人気を如実に示していた。
突然、客電が落ちて暗くなった会場内。メジャー1stアルバム『image』でもオープニングを飾っているインストナンバー「ending」が始まり、ステージを覆っている紗幕に様々な風景をコラージュした映像が流れた。
紗幕の向こう側に4人が登場すると、観客の間から上がった熱い歓声。そして「sin morning」がスタート。真っ白な紗幕はステージを覆い続け、歌いながら踊るメンバーたちの黒いシルエットがミステリアスに揺らめく。そして、曲が終盤に差し掛かると幕は切って落とされ、姿を現した矢川葵、井上唯、和田輪、コショージメグミ。ドラマチック極まりないオープニングであった。
その後も「end of Summer dream」「veranda」「faithlessness」という順番で曲が披露され、アルバム『image』の構成通りにライブは進行していった。サウンドを聴いているだけでも豊かなイメージを喚起してくれる同作だが、こうしてメンバーたちの歌声とダンスも目の当たりにしながら体感すると、一際鮮やかな色合いを伴って迫って来た。
ステージに投影される映像を浴びながらパフォーマンスを繰り広げる矢川、井上、和田、コショージの姿を見つめていると、何やら異世界へ紛れ込んだような気にもなってくる……。ここ最近、表現力を格段に増している彼女たちの姿は、とてもワクワクさせてくれた。特に息を呑まされたのは、中盤で展開したインストナンバーの「int」。フォーメーションを多彩に変化させ続け、優雅に踊りながら立体的な空間を構築する彼女たちの姿は堪らないほど美しかった。
「townscape」を皮切りに突入した後半も、片時も目を離したくない場面と刺激的なサウンドの連続であった。荒れ狂うように鳴り響くピアノ音色が観客を熱く興奮させていた「karma」。激しいクラップが巻き起こっていた「screen」。抒情的なメロディが壮大に広がった「blue light」……MCなどを間に一切挟むことなく、ひたすら曲が届けられ、本編を締め括ったのはメンバーたちのポエトリーリーディングによる「opening」。コショージ作による詩に耳を傾けていた観客たちは、夢中になりながら心を震わせていた。
アンコールを求める観客の手拍子(「bath room」に盛り込まれている印象的なリズムを打ち鳴らすのが恒例となっている)に応えてステージに再登場したメンバーたちを大きな拍手が包んだ。「平日だから仕事とかあったと思うんだけど、頑張って来てくれてありがとうございます」と感極まった様子で挨拶をしたコショージ。そして、4人それぞれが順番に想いを語った。
「私はずっと自信がなさすぎて、大勢の人の前で喋るのが怖くて。でも、みなさんが見つけてくれたことで、みんなの自慢の和田輪になりたいと思いました。これもひとえにみなさんのおかげだと思っています」(和田)
「昔から1人で行動するのが好きで、友だちも少ないんですけど(笑)。人と密に接するのが苦じゃないのが珍しくて。くさいことを言うけど……この3人のメンバーと会えたのは運命じゃないかなと思っています」(矢川)
「ブクガのことを考えることが増えました。地元がめっちゃ好きだったのに、自然とブクガがある東京が同じように好きになっています。ブクガのこと、3人のこと、スタッフさん、みんなのことが好きなんだなと。ブクガをもっと広めたいと思いました」(井上)
「音楽を続けられたらいいね?アイドルの2年半はバンドだと7年くらいの価値があるのかもしれない。犬の年齢みたいに(笑)。みんなの手を離さないようにするので、応援をよろしくお願いします!」(コショージ)
メッセージが届けられた後は、「cloudy irony」「lostAGE」「bed」「snow irony」「bathroom」を連発。一緒に振り付けを踊り、大合唱、熱いコールを送る観客の一体感がものすごかった。そして、「今日の景色をみんなの角膜に閉じ込めて、一生消えませんように!」とコショージが言い、最後に披露されたのは「lastscene」。ドラマチックに高鳴り続けたサウンドが、会場全体を心地よく震わせていた。
「以上、Maison book girlでした。ありがとうございました!」と挨拶をして、ステージを後にしたメンバーたち。ステージ上のスクリーンに「Maison book girl 2017.0719 new single release」という文字が浮かび上がると、大喜びの歓声が上がった。
現代音楽的な変拍子、斬新な展開、幻想的な旋律。リスナーの想像力を無限に刺激する不思議な歌詞。ユニークな動きを取り入れたダンス……規格外とも言うべき部分をたくさん持ちつつ、J-POPシーンのど真ん中に飛び出しそうな勢いに満ちているのが、Maison book girlだ。今後、彼女たちの唯一無二の魅力がさらに幅広い人々を虜にしていくことを、終演後に観客が浮かべていた清々しい表情が予言しているように感じた。
(文:田中大)