2020.01.18 公開
SKE48 高柳明音、ソロ曲『青春の宝石』に込めた未来の自分。 アイドル11年を駆け抜けた“みんな”との絆

高柳明音  画像 1/1

2019年10月、SKE48の2期生として活躍してきた高柳明音がグループから卒業を発表した──。
アイドルとして史上最も遅い時間の卒業発表後、11年という時間を走ってきた彼女に贈られた最後の楽曲は初めてのソロ曲『青春の宝石』。歌詞に込められた過去、現在、そして、未来への希望と願い。堤幸彦監督と作り上げたMVの意味。女優として羽ばたく覚悟を決めた高柳と、彼女に惹かれ、支え、応援してきたファンとの関係に迫った。


──『青春の宝石』のMVですが、とても印象的な仕上がりになりましたね。
高柳「このMVは大物女優(高岡早紀さん)の付き人役を演じる私のフェイクドキュメンタリーが主になっているので、私が街の中を走り回っていたり、高岡さんの荷物を運んだり、現場での指示に応えたりするシーンが多いのですけど、ドラマの方もちゃんと撮影されていたので、それがMVの中でどうやって使われていくのか楽しみですね。一見、歌詞と関連性のないようなMVですが、作ってくださったクルーの方達も『このシーンはあの歌詞の部分に合うと思うんだよね』って話していて、意外とMVの設定と歌詞がぴったりだなって思う部分もあります」

──堤幸彦監督がメガホンを取ると聞いた時はいかがでしたか?

高柳「堤監督に撮って頂けないかなっていう話をしていて、実際にお願いしたら快く承諾頂けて、監督から『どんなMVにしたいですか?』って聞いて頂けたんです。アイドルらしく終わる選択肢もあったんですけど、せっかく堤監督に撮って頂けるなら卒業したら女優として花開いて行きたいという思いを込めて、今後に繋がる作品にしたいと思って『堤監督の思うお芝居中心のMVにして頂きたいです』とお願いしました。そしたらこのアイデアを頂いたんです。めちゃめちゃ作り込まれていて、私のために設定を考えて下さったので、これにかけてみようと思いました」


──最初は明音さんの方から提案をされたんですね。設定を聞いて驚いたのでは?
高柳「がむしゃらに頑張っていたり、アイドルを演じている姿でも良かったんですけど、まさかドラマの撮影という凝ったものが返ってくるとは思っていなかったので正直驚きました。でも、堤監督なのですごいものができるということは分かっていたんですけど、初めからドラマの撮影に入るような勢いでした。素直にすごいなって」

──「付き人」という設定は最初から決まってたんですか?
高柳「最初の設定で決まっていたんですけど、ドラマの撮影をしている女優さんの“付き人”を追ったフェイクドキュメンタリーにしたいからと聞いたのは当日でした。聞いた時は頭が一気にフル回転しましたね。『付き人を追ったカメラってなんだ?』って考えたら納得がいきました。付き人としてのインタビューもあって、本来の自分であったらこう答えるというものを、あくまで付き人として、自分の気持ちを少し入れながら受け答えをしなくてはいけなかったのが大変でした」

──役作りは大変だったんじゃないですか?

高柳「実は役作りはあまりしてなくて。台本がなかったので監督からは『全部その場で指示していくから』って言われていたので、もう身をまかせるしかないなって。せめて自分にできる事は何かなって思って爪を短くして挑みました(笑)。メイクもあまりせず、見た目はあくまで一般の子を意識しました。走りながらコンタクトレンズ の洗浄液を探すシーンから撮影が始まったんですけど、たまたま走っている時に洗浄液を落としてしまって。慌てふためいているところを堤監督が『面白い。そんな発想はなかった』って言ってくれたので、「全力なんだけど完璧にできない子」というキャラクターを軸に肉付けしていこうと思って、現場で作っていきました」

──現場で役をどんどん掴んでいったんですね。
高柳「そうですね。あと衣装も本当にスタッフさんの格好だったので、馴染みすぎて気づかれない事もあったりして、出番で呼ばれても実は近いところにいたり、音響さんや美術さんからも「そこどいて!」って言われる感じでした。カメラが回ってない時も常にそんな感じだったので、この日は自分がアイドルだって事を忘れてました(笑)」

──ちなみに役名はあるんでしょうか?
高柳「私はずっと“明音”って呼ばれていました。みなさん本名で演じています。高岡さんが現場入りする時に「高岡入りまーす!」って大声で言ったり、堤監督も“監督”として出演されているので、ドラマのシーン以外は基本的に即興でした。

──今までの現場で見てきた光景とか活かされたものはありますか?
高柳「カメラマンさん、衣裳さん、メイクさんなど、アシスタントの方が付いている時があるじゃないですか。演じる時に『あっ、このポジションだって』思いましたね。実際の撮影現場にも音響さんの卵のような方がいらしてたんですけど、言われる事が私と被ってるなって思いました。今までの現場でも、カメラマンさんに怒られているアシスタントの方の姿を見ながら「頑張って、私ぜんぜん待つから!」って思って見てきたので、あんな感じだなって(笑)」

──業界の方は共感しそうですね。
高柳「みなさん口を揃えて『こういう子いるわー』って言っていたので、私も『見てきたわー』って(笑)」


──さて、将来は女優さんの方向で考えているんですよね?
高柳「お芝居をしていきたいです。SKE48で経験して学んだことは数知れなくて、お芝居もそうですし、歌もすごく好きになったし、『歌唱力決定戦』も2回連続で決勝戦まで行けて、私の歌を好きだって言ってくれる方も増えて嬉しい事もたくさんありました。でも、歌は表現するものとして歌いたいと思っているので。ミュージカルとか、いつか主演をできるようになった時に挿入歌を歌ってみたいという気持ちはあります。話す事も好きなので、今やっているラジオも続けていきたいと思ってます。バラエティもタレントではなくて、番組の宣伝でお邪魔できるようになりたいです。でも、自分の可能性を切り捨てていきたくはないので、お話をもらったらできる事はどんどんやっていきたいですね」

──卒業後もエイベックスに所属されるんですか?
高柳「そうですね。エイベックスの女優さんとお仕事した事は全くなかったので、一から自分を知ってもらう努力が必要ですね。でも、女優として色々な役に挑戦できることを楽しみにしてます」

──改めてソロ曲『青春の宝石』はどんな楽曲ですか?
高柳「まず、この曲の視点は“今”よりも卒業する時に振り返った時の視点だと思うんです。1番のAメロは過去の話をしていて、Bメロで今になり、サビで集大成のような感じになってるんですけど、『懐かしい時代を 夢に向かってがむしゃらだった自分 頑張ったね 褒めてあげたいよ』という歌詞は、春に卒業する瞬間に自分にそう思ってあげられたらいいなという思いで歌ってます。この曲に見合う自分でありたいなって思いますね」


──歌詞を読んでいくだけで涙腺が崩壊しそうですが、歌詞の中で好きなフレーズはありますか?
高柳「2番の歌詞に『つらかったことも 悔しかったことも もう遠い出来事 誰にも言えなかった悲しみの理由 乗り越え 強くなった』というところです。確かに自分が感じている事だし、誰にも言えなかったことも本当で、自分の悩みは誰にも話さなかったのですが、秋元先生に見透かされてたんですね。この歌は秋元先生が私のことを思って書いてくれたって聞いて、いろいろとリンクするところもあってすごいなって思います。私の一番好きな歌詞は『大切なこととは自分の好きな毎日を生きる事』です。これは、この数年で思った事で、自分を活かせるのは自分だし、楽しくさせるのも自分で、誰かが楽しませてくれるのを待つんじゃなくて、自分が楽しむ努力をする事は大切な事だと感じていたので」


──「今が一番楽しい」とたくさん発言してましたね。誕生日に投稿したツイッターの言葉も印象的でした。
高柳「昔に比べたら悩んでもダメだったところの改善点を導けるようになったのはSKE48に入ってからなので、常に今がベストな人生を送っていきたいと思っています。今辛かったとしても未来の自分が晴らしてくれるって信じてるので、その前向きさで頑張れています。どんなにポジションが下がっても、諦めずにファンのみんなが応援してくれるから前に行く姿を見せられたり、総選挙の時も私以上に信じてくれたみんながいたからもう一度前を向けました。これからはアイドルではないので、今までよりはみんなと戦いながら成長していくんじゃなくて、自分次第になっていくので。その中でみんなに喜んでもらいたいという気持ちは原動力のまま変わらないから、頑張っていきたいなって思ってます」

──アイドルを卒業した後、ファンの方にはどんな風に自分を見てほしいですか?
高柳「全員が言っているとは限らないんですけど、この歳までSKE48をやってきた事をすごく喜んでくれているんです。『できる事なら続けてて欲しかった』と言ってくれるけど、『明音ちゃんが決めた道だから、僕たち、私たちは寂しいけど応援してるよ。明音ちゃんの幸せを願っているよ』って言ってくれるので、そんな姿をこれからも見せていけたらと思います。私自身も、私に会いに来てくれたり、応援するためにかけてくれた時間だったり、気持ちだったり、私はみんなの人生をもらって生きていると思っているので、私が幸せになるときにはみんなも幸せであってほしいと伝えています。幸せの形はそれぞれだと思うので」


──とてもいい関係ですね。
高柳「卒業発表してから会いに来てくれる方もいて、『新曲も出るので改めて会いに行こうと思います』というリプライも頂いているので、会える事をすごく楽しみにしてます」


──明音さんから見てファンのみなさんの印象は?
高柳「今でも鮮明に覚えているんですけど、もともとAKB48のメンバーが好きだったけど私に興味を持ってくれた方がいたんです。改めて考えると握手会で私に会いに来てくれる方は誰かから流れてくる事が多くて。振り返ってみれば私がSKE48への“入り口”になってたんだと最近思うようになりました。卒業発表してからますます実感する場面が多かったですね、ツイッターでも『明音さんを見ていなかったら、アイドルを追っかけていなかった』ってリプライが来る事が多くなって、始まりとかは関係なく、行きたいから来てくれて、そのまま長く応援してくれて、振り返ると入り口だったんだって後から気づくものなんだなと知れて。感慨深いですね」


──改めて伝えたい事はありますか?
高柳「推し変されたらやっぱり傷付きますよね(笑)。私はすごく親しいと思っていたのに、そっち行っちゃうんだって。人と人との関わりなので。みんなは私が忘れているんだろうなって思ってるみたいですけど、覚えてますからね!顔は覚えてるし、あの時こんな話をしたなっていうのも記憶にあるので」

──覚えてもらえているのかという不安は確かにあると思いますね(笑)

高柳「やっぱり言葉で伝えないとダメですね。無意識に『覚えてるよ』って伝えているつもりだったんですけど、伝えきれていなかったんだなって。でも、最近は『ちゃんとあなたの事を知ってるよ』と伝えるようにしたら、みんな自信を持って感動して帰っていきます(笑)」



──今まで印象的なファンの方とのエピソードはありますか?
高柳「私がSKE48に入ってすぐの頃から「明音ちゃんが好き!」って言ってくれていた中学生の女の子がいたんですけど、ある時からぱったりと握手会に来なくなったんですね。自分の道を歩んでいるんだろうなって思ってたら、今年名古屋でSKE48のカメラマンとして再会したんです!『アイドルを自分の手で撮りたくて写真の勉強をしていて、今回決まったんです!』って言ってくれて写真を撮ってもらったんですけど、感慨深かったですね。他にも新幹線が好きだって言っていた子がいて『夢叶うといいね』って握手会で話していたんですよ。数年経って仕事で乗っていた新幹線の車掌さんとして現れて再会しました。応援してくれていた人が自分の夢を叶えている姿を見られたのは感動的でした。自分という存在が誰かの助けになれる事は簡単な事なじゃないのですごいなって思います」

──たくさんの方に影響を与えてきたんですね。
高柳「SKE48のファンの方同士で結婚された方のお子さんの名前が“明音”だったり、その子が大きくなっていく姿を握手会で見せてもらってるんです。日頃から私は『この世に生まれた“明音ちゃんの人生に恥じない生き方を歩まなくちゃいけない』と思ってます。いつかその子が“明音”という名前の理由を親に聞いた時に、恥ずかしくない理由の人でありたい。生まれてきたくれた子たちや、私の名前を付けてくれたお父さん、お母さんのためにも、間違った人間として生きてはいけないと思っています。私自身も明音という名前は大好きで付けてくれた事を親に感謝しているので、その子たちが幸せになる事をこの先も願っています」


──ありがとうございます。それでは最後に新曲「ソーユートコあるよね?」の話を。
高柳「もうしないのかと思ってました(笑)。この曲は私の最期のシングルというより、あかりん(須田亜香里)の初センター曲でもあるし、SKE48としてこれからも進んでいく中の一曲なのでしんみりとは捉えてないですね。みんなで一緒に盛り上げようという意識で挑んでます」


──最後のシングルと聞いて「高柳明音にセンターを」という声はたくさんあがってましたね。
高柳「後から私のファンの方だけでなく、SKE48のファンの方たちが『明音ちゃんがセンターに立つ姿を見たかった』と言ってくれてる事を知りました。期待に応えられなかったのは自分の努力不足だし仕方なのない事ですが、そう思ってくれてた事は嬉しかったです」

──楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。
高柳「この曲は『今が一番楽しい』という思いで聞いて欲しいです。SKE48にとっては久々にできた『オキドキ』のような明るい楽曲で、振り付けもDA PUMPのTOMOさん、U-YEAHさん、KENZOさん、DAICHIさんに担当して頂いたのでキャッチーだし、みんなで楽しめる一曲になったらいいなって思います」


(※インタビューの収録は2019年12月に実施いたしました)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
WWSチャンネルの人気記事をお届けします
【あなたにオススメ記事】

関連記事