9 月 22 日、FM COCOLO が主催するイベント、「平安神宮月夜の宴 ROOTS66 京の二人会 斉藤和義×立川談春」 が京都・平安神宮特設ステージで開催された。本イベントは FM COCOLO/FM802 が手がけ、前代未聞の企画を 次々に繰り出してきた「ROOTS66」から派生したもの。
出演は今年でデビュー25 周年を迎える斉藤和義、そして かねてより斉藤と親交があり、「ROOTS66」のイベントでは開演を告げる口上のナレーションを担当した落語家· 立川談春と、両者ともに丙午生まれの同年齢。
平安神宮月夜の宴 ROOTS66 京の二人会 斉藤和義×立川談春(撮影:渡邉一生) 画像 2/11
ミュージシャンのライブと落語家の高座、そんな異ジャンルの競演 のために用意された特別なステージは京都を代表する平安神宮。しかも事前に 2 人によるコラボステージがあるこ とも告げられていることもあり、前代未聞のツーマンライブを体感しようと、会場には 3500 人の観客が集結し貴重な 一夜を楽しんだ。
そもそも「ROOTS66」とは、1966 年生まれ(丙午)の男性ミュージシャンが、2006 年に当時 40 歳で厄年(数え年 42 歳)を迎えたのを機に集結したイベント。明治神宮への参拝・記者会見を経て、大阪城ホールを満員にするなど 当初から話題に。
そのイベントの打ち上げの席で「10 年後にまた集まろう!」と宣言した通り、10 年後には女性を含 め参加人数を倍増して、再び「ROOTS66」を開催。
斉藤和義は 2006 年の開催当初から本イベントに参加。
他には 宮田和弥(JUN SKY WALKER(S))、中川敬(SOUL FLOWER UNION)、奥野真哉(SOUL FLOWER UNION)、田島貴男 (ORIGINAL LOVE)、スガシカオ、トータス松本(ウルフルズ)、吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)、増子直純(怒髪天)など、日本の音楽シーンでひと際強い個性を放つ面々が顔を並べている。
斉藤和義(撮影:渡邉一生) 画像 4/11
中秋の名月を 2 日後に控え、会場後方にはくっきりと美しい月の明かりが見える。開演前には権禰宜によるお祓い が行われ、ステージには京都の華道「未生流笹岡」家元の笹岡隆甫氏によるいけばななど、“音楽ライブ”とは違っ た、より幻想的な空間が作り上げられていた。
定刻を迎え、開演を知らせる出囃子が鳴るが、その音色は斉藤和義 の楽曲「月影」! さっそくのコラボに観客が驚くなか、ステージに 2 人が登場し、緩やかな雰囲気のなかイベントに 懸ける思いを語り合う。
「音楽と落語、集めれば面白いことになるっていう、みんなの期待をどう背けようと...」と笑 いを誘いつつも、期待に真正面から向かうために落語と歌を一緒にステージで見せていくことに。斉藤和義は「男 節」、立川談春は「替わり目」をアレンジを加えつつ、1 つの作品に組み立てていくように交互に披露。
曲のストーリ ーが落語の話へと続いていく、これまでにない演出や世界観に観客は瞬時に引き込まれていく。
スペシャルな幕開けに更なる期待が高まるなか、「空に星が綺麗」を出囃子にして斉藤和義がステージへ。 この日は野外でのアコースティックスタイルでのライブということもあり、選曲も温かく柔らかな楽曲を中心に セレクト。
「やさしくなりたい」から始まったライブ、ギターをかき鳴らしより熱情を高めていく。
「Are you ready?」「ずっと好きだった」と、男臭くも力強い、情けないけど憎めない 、斉藤和義ならではの“愛”を音に乗せていく。MC では落語の楽しさを語りつつ、 この日のステージを楽しみにしていたことをテンション高めに語る彼。
その後も、 この日ならではの楽曲として「月影」で、じわりと切なげな音世界を演出。 続く「ベリーベリーストロング」ではギターの迫力、より渋みを増した楽曲に オーディエンスたちはじっと聴き入っている。そしてラスト「歌うたいのバラッド」、 歌詞にある“愛してる”が先のコラボステージの世界観にも通じているようで、 楽曲が終わると客席からは感嘆の声が漏れ聞こえていた。
立川談春(撮影:渡邉一生) 画像 8/11
斉藤和義が紡いだ愛の世界を、立川談春は古典落語の代表演目のひとつ 「紺屋高尾」で継いでいく。 真面目一筋で生きてきた染物職人の男が些細なきっかけから吉原で出会った 最上級遊女の花魁に一目ぼれし、もう一度ひと目だけでも花魁に会いたいと 数年をかけて給金を貯め、身分や身なりを偽って花魁に 出会う。
ついに嘘がバレるも真摯な男の心情に、いつしか 2 人は身分を越えて結ばれる。 そんな愛の話を落語初心者でも楽しめるよう、 現代の風刺を挟み込みながら笑いたっぷりに聞かせる。 階段を上る、扉を叩く、話の中に出てくる景色を 扇子や衣擦れなど所作のひとつひとつで画を作り上げ、 より臨場感たっぷりに世界を見せる。
平安神宮月夜の宴 ROOTS66 京の二人会 斉藤和義×立川談春(撮影:渡邉一生) 画像 9/11 平安神宮月夜の宴 ROOTS66 京の二人会 斉藤和義×立川談春(撮影:渡邉一生) 画像 10/11 平安神宮月夜の宴 ROOTS66 京の二人会 斉藤和義×立川談春(撮影:渡邉一生) 画像 11/11
時折観客に声を懸けるのも、演目の世界にぐっと吸い込まれて いくような錯覚すら覚え、話が終わるころにはもっと落語が聞き たいと語り合う観客が多く見られた。
ラストは再び 2 人そろってステージへ登場し、「この状況は 1 人では作ることが出来なかった」と、初めてのコラボに 感無量の表情を見せる 2 人。観客からは何度も大きな拍手が送られ、特別な一夜はあっという間に幕を閉じた。
なお、この日のライブの模様は後日、FM COCOLO の番組内で放送を予定している。 詳しい情報はオフィシャルサイト(https://cocolo.jp/)をチェックしよう。
文:黒田奈保子