品川プリンスホテルの中に円形ホールがあるのをご存じだろうか。
赤い柔らかな絨毯を踏みしめ、思わず襟元を正したくなる、そんな空気を感じながらロビーを抜け、重たい扉を開き、ホールに足を踏み入れる。円形ホールの中央に鎮座する丸いステージには、マイクスタンドと木製の椅子、Martin、Gibsonのアコースティックギター、そして植田と背中合わせで置かれたツアーロゴ。奥には、舞台袖につながるであろう花道が伸び、花道を避けたほぼ360度ぐるりとステージを囲んで赤い椅子が並ぶ。見上げると、二階にはバルコニー席がこれまた360度囲んでいる。
会場に低く流れていたBGMが切り替わり、ゆっくりとステージが回転を始める。あ、はじまる。動き出す予感と興奮がフロアに充満し、古いレコードから流れてきたかのような「雨に歌えば」のテーマ曲とともに、軽やかなステップを踏みながら、花道に現れた植田は、回転するステージに跳ねるように飛び乗ると、Gibsonのアコギを手に取り、一呼吸おいて、メジャーデビューシングルのカップリング曲「アリス」からライブが始まった。中世ヨーロッパを思わせる「a girl」のエンドとともに、静かにステージの回転が止まり、改めて植田が口を開く。「こんばんは植田真梨恵です。今日、クラブeXは360度見て頂けるステージで、私が背を向けている時間もあるもしれませんが(ここで植田、背中側の客席を見ようとのけぞる)、みなさん平等に楽しんでいただけたら嬉しいなと思います。今日は来てくれてありがとうー!」
なかなか演奏されないレア曲「kitsch」では柔らかな月明かりが差し込む寝室の窓辺で歌っているようなライティングの中、幼さと母性が入り混じる植田の歌声が心の奥にふれる。メジャー2ndシングル「ザクロの実」に続き、「よるのさんぽ」で再びステージが回転をはじめると、楽しげな手拍子で一気に会場の緊張がとけ、最後サビでは「今日はちょっと雨が降ったよ」「今日はなんと千秋楽よ」「今日はちょっと目が回りそう」とコミカルなアドリブをまじえながら会場とシンガロング。
「私の誕生日からはじまりました」とツアーを振り返るMCの後、強く前を見据えて「支配者」を歌い、オープニングSEにも繋がる「雨にうたえば」、この夏、CHOYA「夏梅」のCMソングとしてテレビを彩った「勿忘(わすれな)にくちづけ」では優しく豊かな歌声に植田真梨恵が新たに進んで行こうとしている道を感じさせた。ここにある楽器は植田自身の弾くアコギだけなのに、過不足を全く感じさせない、弾き語りとかアコースティックとか関係なく、いつでも最初からそういう顔だったよとでも言いたげな、完成された音楽がそこにある。それが植田真梨恵の強みだと強く思う。
このツアーのために持ってきたという新曲「花鬘(はなかずら)」は「勿忘にくちづけ」よりもさらに、日本古来の言葉とメロディーの美しさと儚さを感じるバラード。
「このツアーでは弾き語りなので、よりシンプルに楽曲をみなさんにお届けしています。私のテンポだし、私のその時のキーだし、そこにしかないものだと思っています」
続いて「エニウェアエニタイム」「BABY BABY BABY」と惜しげもなく未発表曲の披露が続く。「大人になるほど成長せねばなと思います。若い頃に作った歌を歌います」という言葉と共に届けられた「おおかみ少年」が胸に来る。「WHO R U ?」では再び手拍子が起こり、弾き語りならではのリズムもテンポも自由自在に操る植田に翻弄されるのも楽しい。
そして本編最後の曲「さよならのかわりに記憶を消した」でしんと静まり返った余韻の中で、静かに植田が退場していく。
アンコールにこたえ、再登場するとここでいたずらっぽい表情を浮かべて、手に持ったメモを読み上げる。「2019年、ラズワルドピアノツアー開催決定!」そして、2018年初めに開催した【Live of Lazward Piano “bilberry tour”】ツアーファイナル東京グローブ座公演がはじめてのBlu-rayとしてリリースされることを発表。
「本当はね、16歳の頃、弾き語りやりたくなかったんですよ。アコギ弾きませんかって言われて、でも私そういうイメージの歌手になる予定じゃないんだけどって思ったんですけど、弾けないのは悔しいから練習しようと思って弾き語りを始めました。でも思いのほか楽しくて。なんでもできるでしょ。楽しいの。あの頃はまさかこうしてアコギ弾き語りでワンマンをすることになるとは思わなかったんですけど、なんとかかんとかやってます。きっとまたたったひとりのワンマンライブもするからね」そんなMCを挟みながら、けだるさをまとった「I was Dreamin’ C U Darlin’」、最後はこのツアー全公演のラストを担ってきた再会を願う曲「サイハロー」と「また必ず会いましょう」との言葉で2時間を超えるライブを締めくくった。
たったひとりのワンマンライブ vol.3 “good-bye stereotype”
2018.11.4 東京 Club eX
【Set list】
01.アリス
02.夢のパレード
03.a girl
04.砂漠の果てに咲く花
05.kitsch
06.ザクロの実
07.よるのさんぽ
08.支配者
09.雨にうたえば
10.勿忘(わすれな)にくちづけ
11.花鬘(はなかずら)
12.エニウェアエニタイム
13.BABY BABY BABY
14.おおかみ少年
15.ペースト
16.RRRRR
17.WHO R U ?
18.センチメンタリズム
19.さよならのかわりに記憶を消した
EN-1 I was Dreamin’ C U Darlin’
EN-2 サイハロー
■Live of Lazward Piano –凍てついた星座-について
ピアニストの西村広文との二人編成で2013年よりほぼ毎冬開催されてきた「Lazward Piano」。京都文化博物館など特別な場所で開催されることも多く、今回も長崎市内最大級の洋館で、国指定重要文化財でもある旧香港上海銀行長崎支店記念館や、ステージの背面上部にガラス窓が広がり、文字通り「凍てついた星座」を臨む札幌バプテスト教会の他、ツアーファイナルは植田の活動拠点大阪の歴史的建造物であり、国指定重要文化財でもある大阪市中央公会堂大ホールで行われる。
長い歴史を重ねてきた厳かな建築物の中で、グランドピアノとアコースティックギターと歌声だけで紡ぐ美しい夜になること間違いなしだ。
また、今年年明けに開催された「Live of Lazward Piano “bilberry tour”」のツアーファイナル(東京グローブ座)が、自身はじめてのBlu-rayとして年明けに発売されることも同時に発表された。
こちらについても詳細の発表を待ちたい。
【ライブ情報】
Live of Lazward Piano -凍てついた星座-
2019.3.10(日) 長崎・旧香港上海銀行長崎支店記念館
OPEN 18:00 / START 18:30
(問) キョードー西日本 0570-09-2424
2019.3.17(日) 東京・日本橋三井ホール
OPEN 16:45 / START 17:30
(問) H.I.P. 03-3475-9999
2019.3.21(木・祝) 北海道・札幌バプテスト教会
OPEN 17:00 / START 17:30
(問) マウントアライブ 011-623-5555
2019.3.23(土) 大阪・大阪市中央公会堂 大集会室
OPEN 17:15 / START 18:00
(問) サウンドクリエーター 06-6357-4400
チケット一般発売日 2019年2月9日(土)
【植田真梨恵プロフィール】
「わたし、つくるし、それ歌う」
福岡県久留米市出身。心をまるごと掴んで差し出す言葉とあふれる感情ごと全身で歌う感情型シンガーソングライター。
15歳で家族の元を離れ、単身、大阪で音楽活動を始める。その怖いもの知らずのライブパフォーマンスがレコード会社スタッフの目に留まり、17歳でインディーズデビュー。アコギ一本を抱え、年間50本を超えるライブを重ね、2013年にはワンマンライブ全公演完売を記録し、2014年、「彼に守ってほしい10のこと」で念願のメジャーデビューを果たした。初期から一貫して作品全般のアートワーク、衣装のスタイリング、メイクアップ、ライブの舞台演出まで自らこなし、二年連続でミュージックジャケット大賞にノミネートされるなど、その作り出す世界観のファンも多い。
【植田真梨恵オフィシャルYouTube チャンネル】
https://www.youtube.com/user/uedamarie
【植田真梨恵オフィシャルサイト】
http://uedamarie.com/
【植田真梨恵オフィシャルブログ】
http://lineblog.me/uedamarie/
【植田真梨恵twitter】
@uedamarie