2019年6月14日、現役高校生フォークデュオのさくらしめじが、結成5周年記念ライブ『しめたん-さくらしめじが生まれた日』(東京・渋谷区)を行い、満員の客席は終始大きな熱気に包まれた。
さくらしめじは高田彪我(たかだひょうが)・田中雅功(たなかがく)のふたりからなる高校生デュオ。
アコースティックギターによる弾き語りから、現在ではロックやバンドサウンドなど幅広い音楽性へと幅を広げ、既存の“フォークデュオ”概念に留まらない新たなスタイルで活動し、注目を集め続けている。
これまでの活動において、シンガーソングライターのコレサワや、Every Little Thingの伊藤一朗らとのコラボを実施してきたほか、ワンマンライブでは今年5月に2年連続となる日比谷野外音楽堂(通称・野音)でのライブをはじめ、TOKYO DOME CITY HALL、中野サンプラザなど様々な場所でライブを成功させている。
この日のライブは、フォークをベースに、バンド・バラード・ロックなど様々な要素をミクスチャーして進化した‟さくらしめじ”ならではの音楽性を楽しめるとともに、ギターやハーモニーの演奏力・表現力、5年という月日が作り上げた絶妙グルーヴ感、そこから生み出される心地良い音と空間が凝縮されており、高校3年生とは思えないハイレベルなライブを見せてくれた。
また‟サプライズ”というライブタイトル通り、告知やライブ中の演出にも様々なサプライズが仕込まれ、マイナビBLITZ赤坂での2部制ワンマンライブ実施なども発表された。
さくらしめじ Photo by 鈴木友莉 画像 3/10
冒頭、ギターをかき鳴らす2人がステージに登場したかと思いきや、突然「サプライズですよ〜」「こっちこっち!」と2人の声が会場に響くと、2階にスポットライトが当たりさくらしめじの2人が登場。実はステージでギターをかき鳴らす2人はダミー。
‟さくらしめじ5周年でございます”と手書きの文字が書かれ、‟ハッピーボーイ“がテーマだというド派手な赤い衣装を身にまとった2人は、サプライズの興奮冷めやらぬ会場に向けて、タオルを回して盛上るハイテンション曲『Bun!Bun!BuuuN!』でライブをスタートさせた。
観客も飛び跳ねたり、身体を揺らしたりしながら大いに盛り上がり、スタート直後ながら会場のボルテージはトップギアで急上昇。
歌い終えると、挨拶と共に最初に登場した2人のダミーのサプライズについて触れる2人。
雅功は「僕らだと思った人!」と会場に尋ね、それに対してたくさんの手が上がると「まだまだだな…」といたずらそうな笑顔でニヤリ。
さくらしめじ Photo by 鈴木友莉 画像 4/10
そして「どんどんブチかまして行きます!」と、この日のライブのテーマである‟サプライズ”を立て続けに行っていき、5月に行われた日比谷野外音楽堂でのライブが7月5日に音源のリリースについての告知が行われた。
自身初となるライブの音源化との事で、「これから先もずっとずっとみなさんと一緒に、笑顔の輪を、もっともっと広げていきたいと思っていますのでよろしくお願います!…以上、さくらしめじでした!」と終わりの挨拶をして場を締め、ステージから立ち去る2人にどよめく会場。
しかしその直後に「ウソだよ〜!トランスしようぜ〜!」とギターを手にステージへ小走りで戻る2人。ライブが始まって間もなく、たくさんの‟サプライズ"を重ねる2人に翻弄されつつも、始まったのは『ねこの16ビート』。
元々ハードビートの曲ではあるが、成長した2人によって演奏・ボーカルともに骨太さが増し、よりハードロックなサウンドへと進化。
また曲中、彪我は歌詞の内容を引き合いに出し「まだ‟ねこにゃんにゃん”してない、‟ねこにゃんにゃん”、もっと‟ねこにゃんにゃん”してよねー!」とかわいらしい単語を口にしつつも、力強く会場を挑発するように煽るほか、サビのネコの手を真似たかわいらしいダンスも、サウンドが太くなった分、可愛さとカッコよさのギャップがより際立ち、さくらしめじならではの世界観と魅力を持った曲となっていた。
続けて、ラテンエッセンスを織り交ぜられつつ、激しいギターとベースによるミクスチャーロックサウンドで激しく聴かせる『いーでぃーえむ』。
雅功は会場へ手拍子や振りなどを促し、良いリアクションの観客へ、満面の笑みで両手のサムズアップを見せるなど、客席とコミュニケーションを楽しむ姿を見せる。
この曲に限らず雅功は、終始客席をくまなく見まわし会場を盛り上げていたが、こうして観客が漏れなく盛り上がれる空間を作り上げる力は高校生離れしており、これも5周年という月日で養われたものだろう。
さくらしめじ Photo by 鈴木友莉 画像 5/10
その後明るく疾走感のあるポップチューン『ケセラセラララ』へ。
なお曲中、カラーボールが客席へ投げ込まれたが、受け取った観客はプレゼントをもらえるそう。
これはさくらしめじの誕生日であるこの日にちなみに、プレゼントを彼らから逆に観客へ送るという粋な“サプライズ”。
しかしこの話をしている際、ボールを投げた彪我はソワソワしている様子。
実はボールが観客に当たってしまったのを見ていたようで「当たってなかったですか…?大丈夫ですか…?」と真顔でその観客の方へ語り掛けており、会場からは和やかな笑いが起る場面も。
続けてこのMCでは2つめのサプライズとして、今年の冬にアルバムがリリースされる事が発表された。
その後、5周年という節目に際し、SNSを通じてファンから集まった‟さくらしめじの好きな曲”がメドレーで演奏される事に。
自身初めてのメドレーとの事で、2人とも緊張を隠せない様子だが「やりますか(雅功)」
「押忍!(彪我)」と気合を入れ、ギターの弾き語りによるメドレーがスタート。
『ひだりむね』『ゆめがさめたら』『まよなかぴくにっく』など彼らの中でも人気の高い楽曲を中心に全10曲が披露されたが、当初はいずれの曲の中にも‟ほっこりさ”“優しさ”“一生懸命”さを感じたが、この日はそれぞれの曲で異なる表情を見せており、切なさ・疾走感・力強さ・もどかしさなど、ギターと2人のハーモニーのみというシンプルな弾き語りの中、様々な情景が抑揚をもって描かれていた。
またこれを作り上げている2人のギタースキル、抑揚と表現力のあるハーモニー、音楽を楽しんでいる様子、そこから生まれる絶妙なグルーヴ感なども堪能する事ができ、5年という軌跡が生み出した、‟さくらしめじの音楽”を感じ取れるメドレーとなった。
そして再びMCで5年前ストリートライブからスタートしていたことに触れつつ、今年で高校3年生となる2人。
学生生活の卒業を控えた事を受け、さらなるサプライズで「世界一Happyな(高校)卒業ライブ」と題し、高校卒業ライブが行われる事も発表された。
ライブはいよいよラストスパートへ突入。
「誕生日おめでとう!」の言葉で会場の観客とコール&レスポンスを行って声を出させつつ、『はじまるきせつ』『My Sunshine』『スタートダッシュ』『てぃーけーじー』を披露。
エレキギターの爆音、疾走感あるギターやベースが鳴り響く中、観客も笑顔で飛び跳ねたり身体を揺らし、さくらしめじの音楽の渦に完全に巻き込まれ、会場は大きな一体感に包まれて盛り上がりは最高潮へ。
ライブが終了してステージを去った2人に対し、アンコールの代わりに、会場からは自然と『ハッピーバースデートゥーユー』の大合唱が起こり出す。
これを受けて、再びステージに戻ってきた2人。
アンコールに選んだ曲は『先に言うね』。
低い雅功の声と、少し高い彪我の2人よる力強くも感情たっぷりで情緒的なハーモニー、ギターの絶妙なセッションから生み出されるグルーブ感は、聴き手の心にダイレクトに響く1曲。
歌い終えると、雅功は静かに「結成してから(5年間という月日は)あっという間でした。それは1日1日が充実していたおかげだし、僕たちにとってはとても大切なもの。そうした日々を過ごせたのは、みなさんのおかげ。僕たちは2人で‟さくらしめじ”と言っているけど、みんながいないと僕らは成立しないし、みんな含めて‟さくらしめじ”だと常に思っています。結成当初は“みんなで楽しく歌を”と思っていたけど、色んな所で歌うにつれて“こう歌いたい”“こう伝いたい”という気持ちが芽生えてきて、今はいつも応援して聞いてくださっているみなさんへ、音楽の力で、背中を押す事ができたり、寄り添えるようなアーティストになりたいと思っています。
これからもみんなで一緒に音楽を作っていきたいと思っていますので、宜しくお願いします。」
と力強く語った。
そして5月の野音で披露され、邦ロックともいえるミクスチャーサウンドの魅力を持った『同じ雲の下』を披露。
その後もMCをはさみ、彪我は「歌もギターもまだまだですが、僕たちに応援を届けてくれるみなさんが本当に僕たち…大好きです! 僕たちも、みんなのことを愛しています!アイラブユー!」と力強く観客へ向けて口にすると、会場からは大きな歓声と拍手が沸き起こる。
これを受けて雅功も「僕もみなさんが…大好きです!アイラブユー!」と口にすると会場はさらなる大歓声と、大きな盛り上がりで包まれた。
続けて、自身で初めて作詞作曲をした『おもいでくれよん』から、ラスト曲『みちくさこうしんきょく』へ。
『みちくさこうしんきょく』は観客とさくらしめじでの大コーラスによりライブを締めくくる定番曲だが、この日はコーラスをする観客に「今日誕生日の人」を指名し、その観客をさくらしめじの2人と客席全体がお祝いするというほっこりする一幕もあった。
曲が終わると、満面の笑みで「ありがとうございました!」と長い時間深いお辞儀をする2人。
これで終わりかと思いきや、突如スタッフが登場。
2人も知らされていない‟サプライズ”があるようで、怯える表情を見せる彪我に対し、意を決したようにスタッフからの紙を受け取りに行く雅功。
恐る恐る雅功が紙を広げると、くすだまを模した紙が現れ、そこには5周年を祝うメッセージと共に、さくらしめじというグループ名が命名された11月24日、5周年企画第三弾としてマイナビBLITZ赤坂(東京)で2部制のワンマンライブが行われる事が記されていた。
これを見た2人は驚きを隠せず、力強くハイタッチをし、「‟はあ〜”って言葉を、3時間くらい言えるね…」と言葉にならない様子を見せていた。
そして興奮冷めやらぬ様子で、改めて「さくらしめじ、これからも突き進んでいきたいと思いますので、応援よろしくお願いします」と彪我が口にし、雅功も続いて「これからもみなさんと一緒にハッピーな時間を積み重ねて、大きなものにしていきたいし、みなさんの素敵な笑顔をどんどん作っていきたいと思っています。笑顔の輪をどんどん広げていきますので、これからもよろしくお願いします!5周年も頑張ります!」と改めて今後への決意を口にすると、会場からは大きな歓声と拍手が沸き起こった。
数年前までのライブでは、客席もゆったりと手拍子をしながら静かに音楽を楽しんでいた様子を見て取れたが、今回のライブでは特に腕を高く上げたり、身体を揺らしたり、歓声を上げるなど、観客の楽しみ方もバンドのライブのものへと変化をしている事も印象的だ。
こうした空気感を、観客を置いてけぼりにせずに作り上げてこられたのは、‟共に音楽を楽しみたい”という気持ちを持ち続け、丁寧に向き合って積み上げてきた2人の実力の賜物だろう。
今後はどのような音楽を、ライブ空間を私たちに届けてくれるのか。
さくらしめじから、引き続き目が離せそうにない。
(取材・文/佐藤早雪)
さくらしめじオフィシャルホームページ
http://sakurashimeji.com/