超国際派ダンスボーカルユニット・PRIZMAXのメインボーカルであり、スティーブン・スピルバーグ監督作品『レディ・プレイヤー1』への出演でハリウッドデビューも果たした森崎ウィンが、8月23日に浅草花劇場にてBirthday Live『Be Free』を開催した。「ここまで歌いっぱなしなのは初めて」という1時間半ノンストップのステージに、PRIZMAXの持ち歌やソロ曲から森崎自身が作詞・曲を手掛けたナンバーをふんだんに盛り込んで、スタイリッシュで温かみのある“森崎ウィンワールド”を展開。さらに幅広いジャンルからのカバー曲も織り交ぜ、アーティストとしての懐の広さも示しつつ、卓越した歌唱力と天性のリズム感、そして数々の俳優経験で培ってきた表現力を最大限に発揮して、アーティストとしての新たな第一歩を満員のホリック(PRIZMAXファンの呼称)たちの前で刻んでみせた。
ソロライブを行うのは、4年前の生誕ライブ以来2度目となる森崎ウィン。3日前の8月20日に29歳の誕生日を迎えた彼を祝おうと大勢のファンが詰めかけ、二部制にもかかわらずチケットはすべてソールドアウトとなった。そんなホリックたちの期待に応えるべく、この日のために制作されたライブと同名の新曲「Be Free」で、幕開けから客席を総立ちにさせた彼の装いは、濃紺&臙脂のストライプの三つ揃いに蝶ネクタイ! 普段は見られないフォーマルなスタイルで歓声を呼ぶと、“今夜は恥ずかしがらないで、知りたければ伝えて”という英詞で始まるリリックの通り、心躍るテンポと「一緒に歌って!」という掛け声でオーディエンスの心を解放してゆく。何ものにも縛られず、ただ素直な心で自分の音楽を楽しんでほしい――『Be Free』というライブタイトルは、そんな彼の願いの表れなのだろう。
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続いてシャープなギターカッティングが小気味よい「Sing it!」、軽快なカホンの音色からゴージャスなピアノプレイが夏の景色を彷彿させる「One Two Three」と、手練れのバンド陣による演奏と息を合わせて響かせるボーカルは、どこまでも伸びやかで活き活きとしたもの。以前から生バンドをバックに歌うことを熱望していた彼だけに、テンションも明らかに高く、バンドにも客席にも「もっとちょうだい!」と求めてゆく。さらに、息交じりの切ないボーカルで聴く者の胸を締めつけた「I hate you」からは、ファン垂涎のラブソングがズラリ。コントラバスがリリカルに鳴る「いつかの三拍子」では、この曲が生まれたラジオ番組内の折り紙コーナーにちなみ、紙飛行機が天井から降ってくる粋な演出も。ハンドマイクを握りしめて逢いたい想いを熱唱した「恋心」といい、クリアで艶やかな歌声から生まれるラブソング特有のメロウな空気感は、森崎ウィンの真骨頂と言えるだろう。
セットリストも演出も全て森崎自身がイチから手掛けたというこだわりのステージで、真摯に歌を届けつつ、曲中「ごめん、二階に届かないな」と謝りながら紙飛行機を飛ばしたり、パーカッショニストが鳴らす音に「可愛いね」と呟いたり、リアルタイムの想いをあらわにするのも『Be Free』なればこそ。1部のMCでは「Happy Birthday To You」のリズムに合わせ、即興で“カッコいいウィンくん~カッコよくて面白くて歌も上手くて~”と即興で歌い出し、「今、どういう気持ちだったの?」とバンマスを呆れさせたりと、まったく自由この上ない。
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そんなフレンドリーなムードで客席と密なコミュニケーションを取りながら、中盤ではPRIZMAXの人気曲をボサノバアレンジした「カフェオレ」を皮切りに、カバー曲を並べたメドレーをジャジーに展開。ブルーノ・マーズの「The lazy song」ではクラップを誘い、口笛や表情豊かなアクションでオーディエンスを楽しませ、ジャズの名曲「Fly me to the moon」ではコケティッシュな歌唱で濃厚な大人の夜を描き出す。バンドメンバー紹介から雪崩れ込んだ小粋なフレンチポップ「恋は水色」でも、生演奏とのエモーショナルなコラボレーションで“ライブ”の醍醐味を味わわせると、「もう1曲だけカバーを」と昨年テレビ番組でも披露した米津玄師の「Lemon」まで披露。場内からの歓声を受け、その美声で瑞々しくも鮮やかな印象を残しながら、曲が終わると「Aメロがすごく好きなんです」と説明しながら再度歌い出してオーディエンスを笑わせるのだから、“カッコよくて面白くて歌も上手い”という自己評価は間違ってはいない。
ここで「この曲を作ったのは去年の初め。今までとは違う、新しくて挑戦的な楽曲が出来たなと思っております」と、椅子に座ったまま念願の初披露を果たしたのは「Piano」。タイトル通り、ピアノだけを伴奏にしたディープなロストラブソングで爆発する狂おしいエモーションは凄まじい迫力で、こちらの目も耳も釘付けになってしまう。しかし、PRIZMAXの「Never」で突如立ち上がり、シンガロングを煽って以降は、オーディエンスとの一体感をひたすらにフィーチャー。1部では久々のソロライブに「緊張してるんだよ!」とソワソワしつつ「カバー以外は全部僕が作った曲です」と誇らしげに伝えれば、2部では「生音いいね」とバンドメンバーに感謝を述べて、「バンドでもっともっと歌いたい!」と願いを叫んだ。ホリックと共に“NaNaNa……”と声を合わせた「Believe」に、「Ready」ではバンドメンバーも含めて全員を俯かせた次の瞬間、“俯かないで笑って”と歌詞を続けてリアルに笑わせる一幕も。ラストは再び「Be Free」を力強く叩きつけて、今度は場内を“Be Free”の歌声でいっぱいにしたかと思いきや、一気に暗転して森崎の声だけが残るインパクト抜群の幕切れに、客席からは大きな歓声と拍手が! 自らのイメージを妥協なく落とし込んだステージからは、森崎ウィンのアーティストとしての矜持を、しっかりと見て取ることができた。
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アンコールの声に応えて照れくさそうに再登場し、「4年ぶりにソロライブができて嬉しい気持ちでいっぱいです。『Be Free』ツアーとか回れたらいいよね」と告げれば、ホリックたちから同意の拍手が。そして「29歳になって目標を決めました。忙しい中でも、もっと上に行けるように、もっと勉強したい。先輩たちに聞くと、みんな“20代は寝ないで働いてたよ”って言うんで、20代最後なんだから寝てる場合じゃない! それくらいの気持ちで日々精進してまいりますので、これからも森崎ウィンについてきてください」と、頼もしく宣言してくれた。その誓いを胸に刻むようにギター弾き語りで贈ったのは、『レディ・プレイヤー1』の長期撮影から帰国した際、待っていてくれたファンへの想いを表すべく制作&公開された「ただいま」。これまでになくシンプルかつ素朴な歌声で、“ここが僕の帰るところ”と歌うリリックが彼の本心そのままのノンフィクションであることを示す一方、サビでは合唱するホリックたちを見やって「Yeah!」「Oh My God!」と感激してみせる。さらにPRIZMAXの「Three Things」とジャクソン5の「I want you back」を、客席のラップを軸に見事にミックスさせて拍手喝采を呼んでから、この日のステージを一気に優しく締めくくったのが「Shall we dance」。バックドロップに投射された満月を背に、子守歌のようなテンポで“僕の腕の中で夢見て”と甘く歌い上げるのだから、深々と一礼してステージを去っても場内の余韻は冷めやらない。
鳴りやまぬ拍手に2部では予定外のカーテンコールも行われ、「生誕っぽい企画何もなかったんで、良かったら」と誘えば、ホリックたちから「Happy Birth Day To You」の大合唱が。満面の笑顔で退場した森崎は終演後の取材で、「自由こそ僕の象徴。もっと自由になりたい」という想いから、ライブに『Be Free』と名付けたことを告白してくれた。だが「そのためには土台をしっかり作らないといけないことも学んだ」そうで、「アーティストとして、もっとレベルアップするために、もっと楽器や理論を勉強したい」「もっとメリハリをつけて魅せていくライブもしたい」と決意表明。PRIZMAXの一員として、そしてソロアーティストとして、さらなる高みを目指す彼の目線は、はるか高みにある。
文:清水素子