2021.01.26 公開
INORAN、新作アルバムの全曲試聴動画を公開

INORAN(※提供写真)   画像 1/1

2月17日(水)にリリースされるLUNA SEAのギタリスト、INORANの最新ソロアルバム『Between The World And Me』は、その多彩な音楽性が余すところなく発揮され、どの曲も非常に力強いメロディを宿しており、彼のキャリアの集大成となる“充実作”だ。


2020年9月リリースの前作『Libertine Dreams』は、INORANがひとりで作曲&アレンジ、楽器演奏、リズムトラックの打ち込みを手掛けた、セルフ・プロデュース色の濃い作品だった。そんな意欲作『Libertine Dreams』のリリースタイミングで、彼は既に14作目となる本作『Between The World And Me』の制作をスタートさせ、それが『Libertine Dreams』の続編になることを宣言。実際、『Between The World And Me』に収録されている曲たちは、前作のデモ制作期間と同時期に生まれており、『Libertine Dreams』のM-10「Dirty World」が完成した時に、INORANは早々と『Between The World And Me』のM-1「Hard Right」を作曲し始めていた。

あの時期に、もうINORANの中で『Between The World And Me』に対する具体的なイメージがまとまっていたのは、昨年コロナ渦の影響で様々な制限を受けながらも、ひとりで『Libertine Dreams』を完成させ、その過程で彼の中にあるロック、ポップ、フォーク、ダンス音楽などの様々なスタイルがボーダレスに繋がり、それがよりイメージ通りの“自由な音”に近づいたことに、確かな手応えを掴んだのが理由かもしれない。

『Between The World And Me』は、彼らしいファジーなギターリフと艶やかなボーカルが印象的なM-1「Hard Right」でスタートし、スリリングなヒップホップのミックステープのようにグルーヴと世界観が前曲とリンクするロックチューンのM-2「Adrenaline Rush」、ダンサブルな4つ打ちビートとトロピカルなシンセパッドがアクセントとなるM-3「Falling」など、序盤から様々な音楽性の変化をみせる。

中でも、タイトル曲のM-5「Between The World And Me」は、彼が前作を完成させる過程で確立させた、ロックから流行のダンスポップまで幅広いスタイルの音楽を、彼らしいビジョンと色でまとめ上げ、その卓越したスキルがさらに進化した、作品のイメージを象徴する曲だ。ドリーミーでアンビエントな曲の世界観、鋭敏なセンスで選び抜かれたカラフルな音色たち、それに呼応しながら大胆に変化する最高にキャッチーなメロディライン…。この曲は、INORANがこの『Between The World And Me』で、さらなる音の“境地”に到達したことを、聴く者に強く訴えかける。

本作のマスタリングに、前作『Libertine Dreams』同様、アメリカの敏腕エンジニア、ランディ・メリルが参加しているのも見逃せない。ランディは、レディ・ガガ、ジャスティン・ビーバー、テイラー・スイフト、アリアナ・グランデ、ミューズといった、ワールドワイドな大物ミュージシャンの作品を数多く手掛ける、世界の音の流行“最前線”を熟知する達人である。『Between The World And Me』の音は、筆者のような洋楽ポップミュージック・ファンが心底“カッコ良い”と唸る説得力と生命力が宿るが、それが結実したのは、ランディが前作を経て、INORANの幅広い音楽性と優れたメロディセンスを深く理解し、適材適所にその音色をさらに磨き上げたことも一因だろう。



新作『Between The World And Me』と前作『Libertine Dreams』には、アルバムのイメージを象徴する前半3曲、その世界観と異なるフックの効いた7曲目のインスト曲、それを経て後半さらにドラマティックに盛り上がっていくアルバムのストーリー性など、いくつかの共通点が存在する。もし、この2作の相違点を挙げるなら、『Between The World And Me』の楽曲は、実にリラックスしたムードを内包し、メロディによりキャッチーな大衆性を感じさせることだろう。

前作『Libertine Dreams』前半のM-1「Don’t Bring Me Down」、M-2「Soul Ain’t For Sale」、M-3「Libertine Dreams」は、事態がさらに深刻化していく当時のコロナ渦の“緊張感”が、音にシリアスな“ロックさ”として現れており、ビートはダンサブルでありながら、1stアルバム『想』のような人間味溢れる“ファンクさ”が内包されていた。一方、『Between The World And Me』の曲に宿るポジティブなムードとビートの高揚感は、彼がエレクトロニカ、ハウス、アンビエントなどの機械的なダンスビートを深く掘り下げた6thアルバム、『Shadow』に通じるものがあり、それがよりモダンにアップデートされた印象を受ける。

新作の大きなハイライトとなるのが、ラストのM-11「Leap of Faith」だ。幻想的な鍵盤のハーモニーにメランコリックなギター・アルペジオが絡み合う、壮大なこのスローナンバーをINORANは新進気鋭の女性ボーカリスト、ピア・ソーニーと共に堂々と歌い上げる。INORANは、SNSを介してピアの歌を聴き、その才能に大いに惚れ込み、今回参加を依頼したそうだ。彼女のエスニックでミステリアスな雰囲気は曲によくマッチしており、かつての『想』のアイコニックなナンバー、「Monsoon Baby」や「Owl’s Tear」に通じる、和と洋のエッセンスが美しく繋がる独特な世界観がある。

「Leap of Faith」に「Take a Leap of Faith〜(信じて飛ぶ)」という歌詞があるが、本作のアルバム・アートワークとして、この歌詞をイメージした“飛び立つ黒い鷹”が描かれている。前作『Libertine Dreams』を完成させた時、INORANはLibertine Dreams(自由な夢)を追う者は、世界を救う平和の使者として、我々と繋がっていることを実感し、そこから本作のBetween The World And Me(世界と自分の間)というテーマを思い描いたそうだ。


コロナ渦の現在、世界中の人々が様々な厳しい状況に直面し、闘い続けている。しかし、そんな困難を救う“強い力”が、音楽には常に宿っていると、以前INORANは筆者に話してくれた。彼らしい唯一無二の音楽性がさらに磨き込まれ、より自由に表現された『Between The World And Me』の曲たちが、今後どうのように、彼と世界中の人々を繋ぎ共鳴していくのか、今からその興味は尽きない。

Text by Takahiro Hosoe

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