歌手や声優、 女優として表舞台で華麗に活躍しながら、 作詞家やエッセイストとしても実績を残す坂本真綾。 多彩な才能を発揮する表現者が、 3月にCDデビュー25周年を記念したライブ「約束はいらない」を横浜アリーナで開催した。 本公演に込めた想いや当日に感じたことなど、 坂本自身が寄せてくれたコメントを織り交ぜながら、 ライブの模様をレポート。
センターステージの大型ビジョンに、 これまでの坂本真綾の足跡が映し出され、 それが開演ののろしとなった。
1曲目は、 デビュー曲で公演タイトルの『約束はいらない』。 「“すべてはここから始まった”とあらためて年月に想いをはせることができる、 記念イヤーにふさわしいタイトルになったと思います」という本人の言葉通り、 これ以外の曲で始まることは考えられなかったに違いない。
2曲目『CLEAR』では、 ステージ中央部がせり上がり観客を沸かせた。 空気感までも透明感を帯びるように思えるピュアな歌声で、 会場が満たされていくのを感じた。 ペールブルーがかったモーブだろうか、 ボリューム感のあるドレスもAnniversary感を演出している。 「とにかくライブが始まった瞬間から非日常の世界にみんなを連れていきたいという気持ちがあって」制作された、 「普段は着ないようなでっかいドレス」なのだ。
最初のMCで「ようこそ!坂本真綾です。 今日、 会えて本当にうれしいです。 最高の1日にするから」と固く約束した坂本。 ギターのリフが轟く『スクラップ~別れの詩』でクールに歌い、 『ユーランゴブレット』では、 カメラ目線で熱いまなざしを投げかける。 思わせぶりな瞳にドキリとするカメラワークも、 実は本人の強いこだわり。 貴重なクローズアップ映像を、 ぜひこの機会に堪能したいところだ。
「今回は客席数を減らしての公演で、 会場に来られず後から映像でご覧になる方も多いと思いました。 そのため、 カメラさんにステージ上のすごく近い場所から撮ってもらい、 カメラ目線で歌うパートも作りました。 私がカメラに撮られることをものすごく苦手としていることを知っているファンの人は、 とても驚いたと思います」
2度目のMCで、 「この1年、 ずっと頑張ってきた、 我慢してきた日々。 誰に遠慮することなく、 心置きなく楽しんで」と来場したファンをねぎらう坂本。
25周年で思い浮かんだことを曲にしたという『いつか旅に出る日』で、 中盤はスタートした。 坂本真綾が旅した世界各地の色鮮やかな映像とともに、 “望めばどこへでもいける、 何にでもなれるんだ”と、 エールを贈る清らかな歌声に心が凪いでいくよう。 『独白』は、 ピアノを従えてシアトリカルに歌いかけたかと思えば、 ヘヴィなロックへと移行するサウンドやファイヤーボールが飛び出すドラマチックな展開に合わせてパワフルな歌唱へと昇華した。
『gravity』では、 青白いライトが射すバブルの籠の中で歌っているかのような演出。 アシンメトリーのパンツスタイルへ衣装チェンジした坂本は、 あたかも歌う人魚のように見えてくるのだからライブとは不思議なものだ。
ライブ演出について、 「ど派手な仕掛けを考えました。 そういう視覚的なサプライズが加わることで、 いつも聴いている曲も新鮮に届けばいいなと」。 ライブを楽しんでほしいという思いから生まれた数々の演出も、 ぜひチェックしたいところだ。
本公演のセットリストについて、 坂本自身はこうコメントを寄せてくれた。 「25周年の節目に歌いたい曲ばかりなので、 絞り込むのは難しかった。 だからメドレーという形で代表曲をたたみかけるように聴いてもらうパートを作りました。 また、 このような時期にこそ聴いて欲しい曲、 受け取ってほしいメッセージもあったので、 歌詞の内容で選んだ曲もたくさんあります」。
さらにMCで語ったように、 近年の坂本真綾のライブにおいてメドレーはファン待望のセクションとなっている。 25周年メドレーもかなり悩みながら選曲したという。 たとえば、 2018年のヒット曲『逆光』から1998年の『奇跡の海』への繋がりは、 20年を一気に飛び越えるため、 彼女のキャリアを体感できるだろう。 「もしもまだこの声が誰かに届いてるなら その人に誓いたい 僕は愛を忘れないと」と歌いかけた『光あれ』は、 彼女からのありったけの想いを乗せているに違いない。
メドレーではポップな曲から重厚な楽曲、 異国情緒漂うナンバーまで、 次々に色とりどりの楽曲がバトンを繋いでいく。 それら個性豊かな楽曲を、 ときに柔らかく、 ときに力強く、 そして高らかに歌い上げる表現力の確かさにあらためて驚かされた。 しかしながら、 「実は昨年末からライブの直前までずっと喉の調子が悪く、 本番までに整えることができるかすごく不安でした」と述懐。 もしこの告白が無ければ、 おそらく誰も気づかなかっただろう。 それほどまでにすばらしい歌唱だったが、 当人は人知れずプレッシャーと闘っていたのかと思うと、 このライブがさらに愛おしいものに見えてくる。
ライブの最終盤を前に、 さまざまな思いを吐露した坂本。 「10年前に乗り越えて、 叱咤(しった)した曲」と紹介した『誓い』は、 いまを生きる一人一人の胸中に染み渡るメッセージになっただろう。 白いシャボン玉に包まれるような幻想的な空間で歌う坂本は、 どこかはかなげで、 それでいて神々しく凛として見えた。 そして、 ついにオールラスト。 この日一番の大きな拍手のなか、 彼女の代表曲とも言える『プラチナ』でライブは大団円を迎えた。
「コロナで準備が大変でしたが、 迎えた本番はお客さんからエネルギーをいただいて、 プレッシャーをはねのけることができました。 ライブって私たちが作った作品を見せる場じゃなくて、 お客さんと一緒に、 “今”を作っていくものだと実感したし、 こういう一体感を味わえるのがライブの醍醐味(だいごみ)だと思いました」。 その言葉は、 坂本をはじめバンドメンバー、 コーラス隊を送り出すため、 オーディエンスがまるで示し合わせたかのようにいつまでも手拍子を続けた感動的なラストシーンからも伝わってくる。
あらためて本公演を振り返り、 「まわりの人に支えられて気づけば25年。 きっとどんな仕事もいい時もあればうまくいかないこともあると思うけど、 不意に時々“やっててよかった!”という幸福を感じられる瞬間に、 すべてが報われるんだと思う。 私にとってこの2日間のライブは“ここまで続けてきてよかった!”と心底思えた、 幸福にたどり着けた瞬間でした」と語った坂本。
「ライブが自分の居場所」と言う坂本真綾の、 心揺さぶる歌声とそれを彩る豊潤なサウンド、 鮮烈な映像美が一体となったスペシャルな時間を、 ぜひ体感してほしい。
【番組情報】
坂本真綾 25周年記念LIVE「約束はいらない」
横浜アリーナで2日間にわたり行なわれた貴重な公演、 初日の模様をオンエア。
6/27(日)よる6:30~ [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
※放送終了翌日~1週間アーカイブ配信あり
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