中島美嘉が2021年8月29日(日)、全国ツアー「MIKA NAKASHIMA CONCERT TOUR 2021 JOKER」の最終公演を神奈川県・パシフィコ横浜 国立大ホールで開催した。アルバム「JOKER」の収録曲、キャリアを代表するヒット曲、さらに新曲「SYMPHONIA」(スマートフォン向けアプリゲーム『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』主題歌)、「知りたいこと、知りたくないこと」(テレビ朝日系金曜ナイトドラマ『漂着者』挿入歌)も披露されるなど、充実のステージが繰り広げられた。
中島美嘉「MIKA NAKASHIMA CONCERT TOUR 2021 JOKER」最終公演の様子Photo by ハタサトシ 画像 2/12 中島美嘉「MIKA NAKASHIMA CONCERT TOUR 2021 JOKER」最終公演の様子Photo by ハタサトシ 画像 3/12 中島美嘉「MIKA NAKASHIMA CONCERT TOUR 2021 JOKER」最終公演の様子Photo by ハタサトシ 画像 4/12
二人のバレリーナによる円舞に導かれ、ステージに登場した中島美嘉。まずは「辛い時は孤独を選んじゃいけない/間違って/自分を傷つけるから」という歌詞に心を揺さぶられる「ドミノ」、「あなたを愛する心に/永遠を見つけた」というラインが響く「夜が明ける前に」と、最新アルバム「JOKER」の収録曲を披露。憂いと祈りをたたえたボーカルを観客に手渡す。さらに彼女自身が主演をつとめた舞台「イノサンmusical」主題歌「イノサンRouge」、そして、映画「NANA」の主題歌「GLAMOROUS SKY」へ。客席では色とりどりのペンライトが振られ、美しい一体感が生まれた。
「みなさんに届くように、1曲1曲、一生懸命歌います」というMCの後は、アルバム「JOKER」の1曲目に収められた「ノクターン」。明るい曲調と悲しみが滲む歌詞が共鳴し、大きな感動が広がった。その余韻が残るなか、「FIND THE WAY」「ORION」「Dear」などをつなぐメドレーへ。繊細な叙情性、壮大なスケール感を併せ持った歌声からは、バラードシンガーとしての魅力がはっきりと伝わってきた。
ここからは、切実なメッセージ性と豊かな音楽性をたっぷりと味わえるシーンが続いた。ピアノと歌によるシンプルなアレンジで、歌うことへの決意を描き出した「声」。アコースティック・ジャズのテイストを取り入れた「RESISTANCE」。生きることの意味を真摯に問いかける「僕が死のうと思ったのは」。そして、ハードロック調のサウンドが炸裂した
「I DON'T KNOW」。ダンサー、バレリーナを交えたシアトリカルな演出も、楽曲のディープな世界観を際立たせていた。
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中盤のMCでは、事前に観客から寄せられた質問に答えるコーナーも。「ツアー最終日を迎えた率直な気持ちを聞いてみたいです」という質問に対して、「いつどうなっても仕方ないなとちょっと思ってはいたんですけど、『やれる』ということになったからには、その日のベストを尽くそうと思って。その日だけはイヤなことを全部忘れて、泣いたり笑ったりしてほしいなって。だから、嬉しいです、(最終日を)迎えることができて。みんなのおかげです」と答えると、会場からは温かい拍手が巻き起こった。
ライブ後半は「LIFE」「AorB」「ONE SURVIVE」「ALL HANDS TOGETHER」といった高揚感に溢れる楽曲によるメドレーから。さらに真っ赤なドレスに着替え、新曲「知りたいこと、知りたくないこと」(テレビ朝日系金曜ナイトドラマ『漂着者』挿入歌)を披露。ライブはクライマックスへと向かう。叙情的な情景を生き生きと描き出した「桜色舞うころ」、<君を想う ただそれだけで/こんなに苦しい>というあまりにも純粋な愛を歌った「innocent」、そして、玉置浩二の作詞・作曲によるラブソング「花束」では、薔薇の花を想起させる映像によって、感動を増幅させた。本編ラストは「今回……(ツアーを完走できて)本当に嬉しかったです。ありがとうございました」という言葉に導かれた、すべてのフレーズを丁寧に紡ぎ出し、心地よいカタルシスに結びつける。「雪の華」の歌唱は、このツアーの充実ぶりをはっきりと証明していたと思う。
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アンコールは、2001年のデビュー曲「STARS」、そして、2002年の5thシングル「WILL」のメドレーから。さらに「SYMPHONIA」(スマートフォン向けアプリゲーム『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』主題歌)を初披露。ベートーベンの交響曲5番「運命」の旋律が取り入れたこの曲は、彼女の新たな代表曲として浸透しそうだ。
最後は「みなさんの明日がどうか幸せでありますように」という言葉とともに歌われた「A MIRACLE FOR YOU」。悲しみを抱えている人に向けた「この声届けて側にいる/その時間は泣いてあげる」という歌詞は、まさに中島美嘉の真骨頂。この歌のメッセージは、すべての観客の心を包み込み、憂いや苦しみから解放したはずだ。
この後、中島はツアーを共にしたスタッフに感謝を伝えるために作ったという自作曲をサプライズで披露。『音楽を通して思いを伝えたい』という彼女の真っ直ぐな思いが会場全体に広がり、豊かな感動へとつながった。
10月27日に両A面シングル「SYMPHONIMA/知りたいこと、知りたくないこと」をリリース。そして今年のデビュー記念日(11月7日、8日)には、初のBLUE NOTE TOKYO公演「MIKA NAKASHIMA LIVE at BLUE NOTE TOKYO」が決定。デビュー20周年を迎えた中島美嘉は、歌手/表現者として、さらに充実した時期を迎えることになりそうだ。
なお、10月31日(日)から『MIKA NAKASHIMA CONCERT TOUR 2021 JOKER』パシフィコ横浜ファイナル公演の当日の模様がWOWOWで独占配信される。
(文:森朋之)