2021.12.06 公開
yama、独自の世界観で心地良い歌声を響かせる!<JAPAN ONLINE FESTIVAL>

yama (C)JAPAN ONLINE FESTIVAL 2021 Autumn  画像 1/7

ロッキング・オンが主催するオンラインフェス「JAPAN ONLINE FESTIVAL」。今年2回目となる同フェスティバルが、11月20日・21日・23日に開催された。ここでは、11月21日の公演を彩ったyamaのライブの模様をお届けしたい。

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yamaはフードを深くかぶった姿で、バンドを従え舞台の上に立っていた。最初に突きつけたのが『血流』だ。yamaはみずからの歌声と、その歌声へ色を塗り重ねる演奏という絵筆を用いながら、この空間へ、揺れ動く心のストーリーを描き始めた。暗さから明るさまで様々な色が混じり合う。そのグラデーションがどんな風に広がり、具現化した物語を描いてゆくのか、とても楽しみになる始まりだ。

スリリングな音が響きだす。一転、軽快に流れだす演奏に乗せ、yamaは『あるいは映画のような』を歌いだした。歌詞に合わせ、背景には巨大な月の映像も映し出される。ナイトドライブするような気持ちにも色を染めてゆく楽曲や歌声に乗せ、身体や感情が心地好く弾みだす。けっしてポジティブではない。でも、迷い、惑う気持ちさえ軽やかに受け流すように歌い奏でるからこそ、無性に心がウキウキと弾んでいた。ズキズキとした疼きも、なんか今は素直に受け止められそうだ。

「痺れちゃうくらいに怖くてさ」と、yamaは両手でマイクをギュと握り、沸き立つ気持ちを、熱く、力強くぶつけてきた。『麻痺』に触れながら、痺れるくらいのスリリングさを感じていた。演奏が進むごとにエモーショナルさを増してゆくyamaの歌声。揺れる感情が臨場感を持ってせまるからこそ、その思いをダイレクトに受け止めていたかった。熱を抱いた演奏に触発され、気持ちが淡く騒ぎだす。この衝動、もっともっと膨らませたい。

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メロウでソウルフルな響きを持って流れだしたのが、『一寸の赤』。心地好く揺れる演奏へ導かれるようにyamaの歌声も心地好く揺れていた。大きく揺れ動く感情をぐっと押さえながら。でも、揺れ動く気持ちを押さえきれずに、yamaはメロウでスタイリッシュな演奏に乗せ、みずからの感情を優しく揺さぶるように『一寸の赤』を歌っていた。少し切ない気持ちへ思いがシンクロしてゆく。聞き手の心も、歌の登場人物の一人としてyamaは招き入れてくれる。そうやって、一緒に物語を描いていけることが素敵じゃない。たとえそれが、切ない思いだとしても…。

時間は、『a.m.3:21』へ。yamaは同じ部屋の中へうずくまりながら。でも、いろんな思いの景色や物語を、触れた一人一人の心のスクリーンへ映し出してゆく。自問自答してゆくyamaの心模様に触れ、一緒に心の迷路を彷徨いながら。でも、その中から見えるいろんな景色の断片を、甘く、淡い夢を見るように楽しんでいた。


美しいピアノの旋律が連れてきたのは、『ブルーマンデー』だ。yamaの背景には、巨大な青い月や雄大な景観が描き出されていた。壮大な、でも美しい世界の中へと感情を連れ出す楽曲だ。どんな狭い空間にいようと、心はどんな世界や舞台にも立てる。たとえやりきれない気持ちにさいなまれた月曜日の夜だろうが、yamaの歌が、閉じ籠もった心を広い場所へ連れ出してゆく。その景色は美しいけど、どうしようもないくらい影や悲しみを背負っていたのも、心の闇を青い希望の光が照らしていたからだ。

ハウるギターの音。舞台を塗りかえるように、yamaは激しく駆けだした音に乗せ、沸き立つ気持ちを胸に『ランニングアウト』を歌っていた。自分を否定しながら。でも、そんな自分へ愛おしさを覚えつつ、yamaは負け犬な自分が反逆の牙を剥き出し噛みつく姿を夢想しながら。18歳の頃の自分も思い返すように、高ぶる気持ちを胸に『ランニングアウト』を歌っていた。

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透き通る、澄み渡る演奏に乗せ、床を見つめながら、yamaは『天色』を歌いだした。自分自身の心に問いかけるように、美しい透明感を持った歌声をyamaは響かせていた。言葉のひと言ひと言を確かめるように歌うその声に、不思議と心が癒されていた。夜が開けたばかりの薄い青空のような色を、心に感じていた。その歌に、心が救いを覚えていた。


最後に飛び出したのが『春を告げる』だ。小さな部屋の中、妄想の世界を旅しながらも、心にいろんな色を塗り重ねてきたyamaと、その姿を追いかけてきた僕らは、『春を告げる』を聞きながら、気持ちに花を咲かせていた。物語のクライマックスを少しだけ華やかに彩りながら、その物語を、また次の旅へと繋げるように、少し笑みを浮かべながらyamaと一緒に惑う夢を見ていた。


(文:長澤智典)

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