3月19日(土)、ビクターエンタテインメントが主催する「ビクターロック祭り2022」が千葉・幕張メッセ国際展示場にて開催され、サンボマスターが出演した。
ステージでは重いビートが象徴的なトラックに乗せて山口隆(唄とギター)がラップする「その景色を」がまず届けられた。鮮烈なシーンを経て、山口が「いいか、おめえら。悲しみで踊るんじゃねえぞ。苦しみで踊るんじゃねえぞ。じゃあ何で踊るかって、幸せになるために踊るのよ。幸せに踊りまくってまいりましょう!」と投げかける。すると、エネルギッシュなバンドサウンドとともに空気が弾け、「ヒューマニティ! 」のギターイントロに手拍子も発生。そんななか、山口は今日も曲中や曲間に言葉をたくさん詰め込み、あらんかぎり伝えようとしている。
「おめえの心の花が咲けばいいなと思って、ここに歌いに来たんだ! その花の花言葉は不安じゃねえぞ。悲しみじゃねえぞ。真っ暗闇じゃねえぞ。愛と平和だ!」。そんな言葉をきっかけに鳴らされたのが「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」だ。心穏やかではいられない出来事が続く昨今だが、そのうえで「この毎日で、おめえと一緒にいるって決めたんだよ!」(山口)と叫び、ラブ&ピースを鳴らすのがサンボマスターというロックンロール。今は「愛と平和!」とシンガロングすることすらできないが、それでも確かに一つの想いがあの時共有されていた。
これら3曲による走り出しのあと披露された最新曲「ボクだけのもの」も心に残る名場面だった。魂から声を出す山口の独唱に、近藤洋一(ベースとコーラス)のベースライン、木内泰史(ドラムスとコーラス)による助走のビート、そして観客の手拍子が順に加わることで迎えるドラマティックなオープニング。削ぎ落としたアプローチによって浮き彫りになった歌と言葉が、聴く人一人ひとりの心に浸透していく様。ミクロとマクロ、個人と宇宙の交信をイメージさせるようなロマンティックな演奏だった。
「ちょっと早いけどよ、俺たちからの春休みの宿題はよ・・・。次会う時まで勝手に死ぬんじゃねえぞ、この野郎!」(山口)と「輝きだして走ってく」からライブ後半へ。「できっこないを やらなくちゃ」が、様々な制限があるなかでも全国各地に音楽を届け続けるロックバンドとしての生き様、そして3年ぶりに開催された「ビクターロック祭り」の真ん中にある想いと重なったところで、いよいよ残すはあと1曲。最後は観客一人ひとりに「花束」を贈り、心の中でのコール&レスポンスで心を繋いだ。あなたの心を縛る呪いは、何回でも解きに行く。あなたには生きてほしいんだと、何回でも伝えに行く。綺麗事でも上っ面でもなく、全力を懸けてそれをやるのがサンボマスターというバンドだ。
2014年に初めて開催した「ビクターロック祭り」。
新型コロナウィルスの影響により中止となった「ビクターロック祭り2020」から2年、前回開催の「ビクターロック祭り2019」からは3年ぶりの開催となった。
(Text by蜂須賀ちなみ)