口腔底がんのため53歳の若さで亡くなったイノマーの遺志を受け継ぐ一夜限りのロックフェスティバル『イノマーロックフェスティバル』が7月16日(土)に有明・東京ガーデンシアターで開催された。本記事では、性春パンクバンド・オナニーマシーンのリーダーだったイノマーと親交が深かったサンボマスターのライブレポートをお送りする。
サンボマスター<イノマーロックフェスティバル>(写真:ミズタニシュウヘイ) 画像 2/5
1曲目は『輝きだして走ってく』。山口隆(唄とギター)が「よく来たなこのやろう! 笑ってっか、みんな!」といつもの山口節がさっそく炸裂する。「2002年のあの頃と同じ気持ちで言わせてくれ」そう、サンボマスターとオナニーマシーンは同じ時代を駆け抜けてきたバンド同士なのだ。
「せっかくだから派手にやらかそうじゃねーか、みんなー!イノマーさん、みんなのこと見てっからよ。『忘れないで 忘れないで』では歌詞に思いを重ね「忘れんなよ、イノマーさんのこと忘れんなよ。あの笑顔忘れんなよ」山口は会場にそう語りかけた。
サンボマスター<イノマーロックフェスティバル>(写真:ミズタニシュウヘイ) 画像 3/5
「イノマーさんとは本当に毎晩のように電話してて。いつも一言目は『あーやんなっちゃった』って言うんだよ。でもかっこいいんだよ、それが。最後までカッコよかったよ。もっと話したかったし、もっと笑いたかったし」MCでは山口が噛み締めるようにイノマーとの思い出を語った。
「イノマーさんと過ごしてて、スゲーことが目の前で起こってんのにわかんなかったんだよ。イノマーさんいつもふざけてっから。だから今日は『いっしょの時代、生きてくれてありがとう』って言いてぇんだ」。山口の語るイノマーのエピソードを噛み締めるように会場はしんと静まり返る。
イノマーとのエピソードに続いたのは『ラブソング』。亡きイノマーへの思いが重なり胸が熱くなったオーディエンスも多かったことだろう。
サンボマスター<イノマーロックフェスティバル>(写真:志賀テルミ) 画像 4/5
続いては、オナニーマシーン主催のフェスに初めて呼ばれたサンボマスターが歌った思い出の曲だという『そのぬくもりに用がある』。「初めて一緒にライブやった時、この曲やったんだよ」山口は思い出を語りつつ「イノマーさん、ギターソロやってもいいですか」と空を仰いでギターを奏でた。
「俺は絶対にグッバイって言わねえぞ。イノマーさんありがとよ。これからもよろしくお願いしますよ!」そう告げながら歌ったのは『できっこないを やらなくちゃ』。会場中が立ち上がって盛り上がると最高っす!最高っす!最高っす!最高っす!イノマーさん力貸してくれたね!」と山口は再び天を仰いだ。
サンボマスター<イノマーロックフェスティバル>(写真:たたみ) 画像 5/5
ラストチューンとなったのは『花束』。「この花束、イノマーさんに贈りたいと思いませんか! イノマーさんは俺たちを励まして、笑わせて。俺、イノマーさんが励ましてくれたように、いろんなロックスターが俺を励ましてくれたように、僭越ながらみんなを励まそうと思います! おめーがクソだったことなんて一度もねえ!」山口の熱さと優しさが花束となって会場を包み込んだ。そして最後には、また空を指して「イノマーさん、今日のライブあんま良くなかったって思ってっかな?今度またLa.mamaでやろっか」とつぶやく。渋谷La.mamaは、20年ほど前に彼らが切磋琢磨したライブハウス。山口は往年のファンを泣かせる一言を告げつつ、最後には「イノマー!イノマー!」とシャウトして会場を後にした。
(取材・テキスト:バッキー大坂)
7月16日 イノマーロックフェスティバル / サンボマスター セットリスト
M01:輝きだして走ってく
M02:ヒューマニティ!
M03:忘れないで 忘れないで
M04:ラブソング
M05:そのぬくもりに用がある
M06:できっこないを やらなくちゃ
M07:花束