コブクロが、3年ぶりとなるアリーナツアー『KOBUKURO LIVE TOUR 2022 GLORY DAYS』を完走した。ファイナルとして2022年12月11日(日)に開催されたマリンメッセ福岡公演の模様が、2月26日(日)21時よりWOWOWプラスにて独占放送される。
オープニングSEに乗せて、ステージセットには流れ星のような光線が現れては消え、まるで星空の下にいるような心地になる。 バンドメンバーに続いて登場した黒田俊介と小渕健太郎。 2人は互いに近付き、気合を入れるように腕をぶつけ合った。 「福岡ファイナル!」とイントロに乗せて黒田が叫び、ツアータイトルに因んだ新曲「Mr.GLORY」を放った。 会場を埋め尽くしたファンはクラップしながら身を揺らす。 <思い通りに行かない日々>に寄り添いながら、<次の世界へ連れてってMr.GLORY>と歌う、まさにこの時代の空気にピッタリな曲である。 続く「今、咲き誇る花たちよ」では、<どんな風にも負けない強さと優しさで根を張れ>と鼓舞する歌詞が心に響く。 アリーナツアーの開催が3年間叶わなかったのも、コロナ禍という逆風の影響。 2人も観客も同じ風に身を晒しながら、強くこの再会を待っていたことが伝わってくるような、熱い幕開けだった。
「ようこそいらっしゃいました、コブクロです!」と挨拶すると、大きく両手を広げて観客全員をエアーでハグするように、自分の身体を抱きしめた小渕。「久しぶりにこうしてアリーナのツアーをやれる日が来ました。この景色が本当に見たかった、ありがとう!」と感無量な様子を見せる。
MCでは曲にまつわるエピソードをじっくりと解説。1曲目の「Mr.GLORY」については、コロナ禍初期に比べれば「明かりが見えてきた気がしているんです」という変化の兆しを小渕は感じ、「もう次の時代は見えている。もうそこで待ってくれているんだ」との想いを込めてつくったのだと明かした。大切なことに気付いて強くなった自分が、次の時代に自分を迎えに来る、というコンセプトを伝え、「ツアーが終わる頃には皆が一皮むけて、パワーアップしてくれているイメージを持ってつくった歌でした」と言葉を続けた。
ドラマティックな名バラード「流星」、続いては大胆にアレンジを変えた「ベテルギウス」を披露。ロングトーンの美しくも力強いハーモニーを2人は響かせた。更には、黒田と小渕が生まれて出会い、コブクロが誕生し今に至るまでの軌跡を綴った「Always(laughing with you.)」へ。この後小渕は絵本のような曲だと紹介。2021年にリリースされたアルバム『Star Made』収録曲だが、アリーナ会場での披露に今こうして、ようやく漕ぎ着けたことに喜びもひとしお。「あなたに、あなたに、あなたに聴いてほしいなと願っていました。やっと歌えました、ありがとう!」と身を乗り出すようにして語り掛けた小渕。その姿からは大会場の全体ではなく、一人ひとりに真っ直ぐに歌を届けようとする気持ちが伝わって来た。
着席を促して次に届けたのは、ツアーでのバンド演奏は13年ぶりの披露となるラブバラード「恋心」。明るいメロディーラインではあるが、届かない想いを歌う切なさが伝わってくる。ステージから左右2本アリーナに向かって伸びた花道の突端に、黒田、小渕がそれぞれ立って歌い届けた「恋愛観測」は、深い感動をもたらした。歌い始めは小渕がオクターブ上のハイトーンで歌唱し、続いて黒田と高低入れ替わり、どこかミステリアスな響きを醸し出していく。<この宇宙の端と端にいるような気持ちでいたって>という歌詞の描写を二人の立ち位置で表現し、<銀河の果てから眺めればこんなに近くに居るんだ>というメインテーマは、会場全体の一体感によって自ずと伝わって来た。
メインステージに戻り、ピアノインストから滑らかに始まった「あの太陽が、この世界を照らし続けるように。 」は圧巻だった。 後のMCで小渕が語った言葉によれば、「この歌詞をもっと届けるアレンジをしてみたい」という黒田の想いを発端に、試行錯誤の末にできあがった形なのだという。 ピアノに乗せて小渕が吹くブルースハープに続き、雄叫びのような絶唱を響かせた黒田。 曲が終わると小渕は目に涙を光らせて黒田を讃え、観客はスタンディングオベーションを送った。 2人はハイタッチを交わすと、小渕は「今、この拍手が世界中に響いてるかもしれない。 こんな歌を歌える人いますか?」と黒田を絶賛。 黒田は力を出し切って放心したかのような表情を浮かべ、深々と頭を下げた。 小渕はこの曲について「太陽は命、世界中の命は太陽なのかな?と思って書いた歌」だと解説。 「海を渡って、ある国では大きな争いがあり、地下に潜って家族とうずくまって、外に出ることなんて絶対に許されない……燦燦と照る太陽があるのに、それを観るのが怖いという、幼い子どもたちがいるんですよね。 昔の話じゃなくて、今、今日も」と世界情勢に思いを馳せた。 「いつかその子たちが地上に上がって、元気に太陽の下でまた遊べる日が来るように」(小渕)という願いを込めた情熱的なパフォーマンスに、いつまでも拍手が鳴り止まなかった。
「Days」では、終盤<Glory Days>と二人で声を重ね、歌唱する場面に胸が熱くなった。思い通りに行かない苦しい日々を無かったことにせず、「その時を乗り越えた自分が、未来の自分を助けてくれる、背中を押してくれる」というイメージを、小渕はここでも繰り返し語っていた。印象深かったのは、「この時代を一緒に皆と過ごしました。僕らもこうしてまた大きなライブをさせてもらえるようになりました」(小渕)と語り、混迷の時代を生き抜く同志としてファンやスタッフを表現したこと。「皆の心に届くライブをつくろうと待っていた。皆が待っていてくれた……これだけで幸せです。ありがとう!」と涙を浮かべていた。
ライブは終盤を迎え、「そろそろガツッと盛り上がっていく?」(小渕)と煽って、鋭いギター・カッティングから「神風」へ。パワフルなロックナンバーで会場を沸かせた。続いては、大阪・関西万博オフィシャルテーマソング「この地球(ほし)の続きを」を披露。<こんにちは>という歌詞に合わせた手の振りをオーディエンスと共に行ない、声出しNGの状況下ではあったが、コール&レスポンスに代わるコミュニケーションを図った。黒田の「小渕!」コールで、法被姿の小渕が和太鼓を強打するダイナミックな見せ場も。エネルギーに満ちた空気感の中で本編を終えた。
アンコールで2人が再登場すると、「僕ら今年(2022年)で結成24年、来年(2023年)で25周年を迎えます」と小渕が語り始めた。 テーマソングを手掛けた2025年の万博では、世界中から人々が訪れることから、黒田の歌が「いつか世界中の人に聴いてほしいと思っているんですけど、本当に夢が叶いそうです!」と満面の笑み。 黒田は深く礼をし、観客は2人に大拍手を送った。 今回のツアーは、懐かしい曲たちも盛り込みながら「でも、一番新しいコブクロで、『カッコいいな』と思ってもらいたくて」(小渕)との想いでつくり上げたのだという。 「今日が絶対一番いい。 そして、明日になったら明日が一番いいと思える日々を送れるようなテーマソングをこれからもバンバン書いていくので、いつも隣に置いてください。 これからも応援よろしく!」と呼び掛け、2人は揃って深々と頭を下げた。 最後の曲は、22年前に初めて東京でレコーディングした、記念すべきメジャーデビューシングル「YELL~エール~」。 2人を温かく包み込むようなファンのクラップに乗せてギターを奏で、歌い始め、やがてバンドが加わって豊潤なアンサンブルが編み上げられていった。 2人きりで始まったコブクロに様々な音、人が加わり大きくなっていく――曲の構成が、2人の物語の写し絵のようになっていた。
いわゆる代表曲を連打するようなベスト盤的メニューとは一味違った、コブクロの最新形を提示しようとする強い意志が伝わってくるセットリスト。彼らの今を感じ取ることができ、25周年に向けた次なるアクションが楽しみになるツアーファイナル。貴重なライブを是非、WOWOWプラスでチェックしてみてほしい。
文=大前多恵
■放送番組情報
コブクロ「KOBUKURO LIVE TOUR 2022 GLORY DAYS」
2023年2月26日(日)21:00
収録日:2022年12月11日/収録場所:マリンメッセ福岡
https://www.wowowplus.jp/program/episode.php?prg_cd=CIIDM22086