2023.03.02 公開
ヒューマンビートボックスのイベントBEATCITY JAPANが日本大会開催

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ヒューマンビートボックスのイベント「BEATCITY JAPAN supported by SWISSBEATBOX」が2月25日に東京・Spotify O-EASTで開催された。国内外のビートボクサーたちが集結したこのイベントは、ビートボックスの世界大会「Grand Beatbox Battle(以下、GBB)」への出場権をかけた予選でもある。また世界のビートボクサーたちのスペシャルショーケースが行われた。

なお今年の「GBB」は10月18日から21日の4日間、東京・EX THEATER ROPPONGIで開催される。さらに10月22日には次回「GBB」の出場権をかけて8人のビートボクサーがバトルする「7 To Smoke」とアフターパーティーが東京・Spotify O-EASTで行われる。「GBB」の開催は2021年10月のポーランド・ワルシャワ大会以来、約2年ぶり。またアジア地域での開催も初となる。今回の「BEATCITY JAPAN」は「GBB」を主催するビートボックスコミュニティ「SWISSBEATBOX」が公式サポートしている。

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BEATCITY JAPAN PRE」に引き続き、司会はタレントとしても活躍をするユージが担当した。まずはビートボックスバトル開始の合図である、司会と観客のコールアンドレスポンスの練習から。司会が「I say the 3 and you say the 2 and 1」と言った後、「3」とカウントをはじめたら、観客は「2、1、Beat Box!」とレスポンスしたらバトルをスタートさせる。前回よりも大きい会場にも関わらずチケットは前売りで完売。パンパンの場内で観客とユウジとエネルギーいっぱいの掛け声の練習を行った。

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バトルは1試合2ラウンドで、持ち時間は1ラウンド各90秒のトーナメント制。審査員は世界的レジェンドのビートボクサーであるNaPoM、Kenny Urban(「GBB 2016」SOLO部門優勝)、AFRAの3人の投票で勝敗が決まる。意図的な接触は禁止。129名が参加した予選を勝ち抜いたRAY、TKM、RUSY、GEN、KAJI、Darren、MOMIMARU、Cheeの8名が出場した。優勝者には「GBB」の出場権と賞金50万円が与えられる。

記念すべき初戦はRayとTKM。2人は会場に集まった満員の観客に「人多いっすね……」と驚いた様子。じゃんけんで先攻になったTKMは、いきなりさまざまな種類のベースを喉から響かせて場内を沸かせる。さらにクリックロールなどのスキルを応酬した。後攻のRayは出だしにメロディ、続いて目が覚める大音量のスネア、さらに歌までも聞かせる。巧みなマイキングで低音を自由自在に操った。2ラウンド目は互いにスキルでアンサーしあう非常にハイレベルなバトルだったが、審査員は3人ともにRayに投票。AFRAは「僅差だった」という前提で、試合の流れをうまくコントロールしたRayを評価した。

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次に登場したのは、GENと先月開催された「BEATCITY JAPAN PRE」にも出場したRUSYとのバトル。先攻のRUSYはエレクトリックなサウンド感に抜群に大きい低音を響かせて観客を驚かせる。その中に彼のシグネチャーとも言える「キューッ」という信号音も噛ませた。GENは音の高低差と深度を絶妙に使い分け、さらに動物の鳴き声のような音を混ぜたパフォーマンスを聞かせた。RUSYは自分のターンになると、流れを受けながらうまく自分の世界観を表現した。低音が効いたドラムンベースやスネアの早打ちを的確に鳴らして観客を躍らせた。その流れを切ったGENのプレイに客席から手拍子が巻き起こったが、審査員は全員RUSYを選んだ。Kennyは2人を「スーパードープ」と絶賛。「個人的に2ラウンド目が決め手だったがどちらも素晴らしかった」と話した。

3試合目のKAJIはRUSYも所属するユニット・SARUKANIのメンバーでもある。対するDarrenもダークホースとして注目されているビートボクサーだ。Darrenは前半に歌をベースにムードある雰囲気を作り、後半は一気に畳み掛けるビートにスイッチする構築されたパフォーマンスを聞かせた。だがKAJIは音圧とバイブスで試合の流れを無理やり自分側に引き寄せる。ウワモノはハイエナジーなEDMサウンドで、リズムはベース、スネア、キックのどれも大音量。サイケトランスのような展開に入ると観客も手拍子。ラストには警笛のような音も混ぜた。ジャッジは全員KAJI。まったく違うスタイルの両者であったが、NaPoMは「どっちがこの場を制したかってのがポイントになった」と話した。

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MOMIMARUとCheeのバトルは白熱した内容になった。Cheeはドープなノリから細かいスキルを織り交ぜ、ジェスチャーや動きでもMOMIMARUを挑発する。個々の技の音も大きく、クオリティが高い。一方のMOMIMARUは「いくぞ」とクールに言い放つと正確なタイミングで、四つ打ちのキックを鳴らす。まるで動と静。互いに一歩も引かないバトルに、ステージは一触即発の雰囲気に包まれる。2人は試合前のインタビューでともに「優勝する」と宣言していただけに、内容は実力伯仲だった。難しいジャッジになったが軍配はMOMIMARUに。AFRAはこのバトルを「限られた音数と細かい(音の)粒の配置で戦ってた」と解説し、その上で「ひとつひとつの音のクオリティがより高かった」と決め手を話した。

準決勝に入る前に1月の「BEATCITY JAPAN PRE」のバトルで優勝したEttomanのショーケース。ブラックミュージックのノリを崩さずにヒップホップ〜ダブステップ〜EDM〜ドラムンベースを自由に行き来する。クールでタイトなスタイルが魅力だが同時に人間臭さが感じられる場面も。1曲目が終わった後、客席から「ぱっぱ〜」と娘さんから声援を受ける。一気に表情が緩んで、場内も癒されたシーンだった。また今回はTATSUAKIをゲストに迎え、ユニット・iLLDEMとしてもパフォーマンス。5年ぶりの復活パフォーマンスとなった彼らは厚みのある音とクリエイティビティを披露した。2人は超満員の客席を見て「2015年にもO-Eastのステージに立ったんですが、今回はお客さんの数が全然違う」と笑顔で話していた。

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セミファイナル第一回戦はRUSYとRAY。RUSYは、早めのBPMの四つ打ちの印象が強いが、今回はキャッチーなミドルテンポで、かつ複雑なリズムで観客を乗らせる。RAYも似たテンポを対抗し、観客にはハンズアップや手拍子を促す。さらに相手への挑発も。「GBB」出場権への思いが伝わってくる。2ラウンド目のRUSYはダブステップのビートから、隙間にも細かい音を詰め込む複合技から緩急もつけて攻め立てた。対してRAYは硬いスネア音を中心にさまざまな技を織り込みつつ、音楽的に成立した非常に高度なプレイで観るものを唖然とさせる。だがそれにひるむことなくステージの中央を一切どかないRUSYが印象的だった。ジャッジはRUSY。AFRAは「ベースが決め手になりました。ベースには(低音で)下から人を乗らせる力あります。(このバトルでは)RUSYの(ベース)音が場内を支配していた」と話していた。

配信などでは伝わりづらいと思うが、会場では高音も低音も1音ごとに凄まじい迫力があり、振動が内臓に響き、思わず身体が突き動かされる瞬間が多々あった。今回の出場者は全員実力者だっただけに、最終的な判断基準は言葉にならない、理屈を凌駕する説得力やディテールだったように感じられる。

続いて、KAJIとMOMIMARUが登場。今回のKAJIはニューメタルを思わせるロックで手数の多い激しいパフォーマンスを披露する。サービス精神も旺盛でスキルのリズム感に合わせて相手のボディにパンチを入れるようなアクションを交えて場内を盛り上げた。対してMOMIMARUは正攻法に自分のスタイルを聞かせる。前回の試合同様、音の配置、構成、組み合わせのセンス、音量、すべてがハイクオリティ。このバトルは完全にスタイルウォーズだった。勝敗を分けるのは非常に細かいディテールになると感じさせた。パフォーマンスが終わると2人は肩を組む。出し切ったのだろう。素晴らしい瞬間だった。審査員のKennyは「こういうバトルは自分にとっても刺激になる」と語った。ジャッジはMOMIMARU。スキルのコンボが繰り出されたバトルだったが、勝因は1音1音のクリーンさだった。またAFRAも「この緊張感の中で自分のスタイルを貫けることがすごい」と2人を大いに讃えた。

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決勝への緊張感が高まる中、Kenny Urbanのスペシャルショーケース。審査中に着ていた白いロングコートをここで脱ぎ捨て、トレードマークであるマッチョな肉体を見せつける。そこから出てくる音は当然パワフル。だが技は繊細。高い音も低い音もすべてクリア。良い意味で濁りがない。ひとつの口からいろんな音が出る。マイクを喉につけてミュートしたビートを表現したり、パーカッシヴな音を出したり、次にどんなことをしてくるのかワクワクして同時に乗れるグルーヴを出す。吐く音と吸う音が近いのにメリハリがある。同じ人間としてどういう呼吸をしてるのか。やはり「GBB」の優勝者はとんでもない。

そんな「GBB」の出場権をかけた「BEATCITY JAPAN」決勝がスタート。先攻のMOMIMARUはステージの端で座ってRUSYを煽るようにパフォーマンス。珍しい。それほどまでに闘志を燃やしていることが感じられる。だが音は冷静でクリアで緻密。グルーヴがあってブレもない。対するRUSYは「近いよ、先輩」とクールにいなして、最初の5秒は相手の流れを受けるが、あえて切って、今度は歌を披露する。そこにおなじみの耳をつんざく「キュウィンッ」という信号音を混ぜ、インワードリップベースを入れ、そこからMOMIMARUばりに正確な四つ打ちビートをかます。しかも音が重い。さらに歌ネタをキープしつつ、グルーヴの中にさまざまな技を入れる。さすが決勝戦。最後のラウンドでMOMIMARUは「みなさんおまたせしました」と「Limit Break」のルーティンを出す。しかもバトル仕様なのか、よりハードで攻撃的。対するRUSYはこの日一番と言っても過言でないほどの低音を出し、客席から嬉しい悲鳴が上がった。同時に、ビートも刻み、最後はスクラッチ音まで。どちらが勝つかまったくわからない。

審査員による協議のあと、NaPoMが2人の手を握る。勝者はどちらか。上がったのはMOMIMARUの手。その瞬間MOMIMARUは涙を見せ、「ありがとうございます。勝って泣くのは5年ぶり。悔しい涙が多かった。今年が最後の挑戦なので、『GBB』もがんばりたい」とコメントを残した。2人のバトルについてNaPoMは「とにかくレベルの高いバトルだった。なによりビートをダイレクトに感じられたのが素晴らしかった。今日、この場に来られたことを誇りに思います」と感想を残した。

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興奮冷めやらぬ中、2組目のショーケース。バトルに参加したKAJIとRUSYにKoheyを加えたSARUKANIだ。残念ながらSO-SOの出演はVTRのみ。SARUKANIはビートボックスの世界大会「Grand Beatbox Battle 2021」のクルー部門で準優勝、RUSYとSO-SOのユニットSORRY名義ではタッグループ部門で優勝を果たしている。もちろんこれは日本人初の快挙。今年の爆発的なビートボックス人気に大きな影響を与えている。ショーケースでは、決勝を終えたばかりのRUSYも素晴らしいパフォーマンスを見せた。彼らは4月から7月にかけて全国7都市と回るジャパンツアー「IROHANIHOHETO」を開催する。

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最後はお待ちかねのNaPoMのショーケース。まず1人の人間の口から出てるとは思えないような音しか出てこない。ロックっぽいダーティなベース音からディジュリドゥ的な震える低音にシフトし、そのままサイケトランスEDMへと流れていく。口内が常にマルチタスクで、音が非常に大きく、リズムも正確で、キレがあり、展開が多く全く飽きさせない。ビートボックスとしてはもちろんダンスミュージックとして踊れる音圧を常にキープしている。最後はゲストにケニー・アーバンも登場。スヌープ・ドッグの人気曲「drop it like it's hot」をサンプリングしたルーティンや、カーペンターズの「カントリーロード」のドリルアレンジを披露するなど、最後の最後まで観客を盛り上げ続けた。

YouTubeには今回出演した国内外のビートボクサーの動画が多数アップされているので、10月に開催される「GBB23 TOKYO」までにしっかりと予習をしておこう。

【オフィシャルホームページ】
https://www.beatcityjapan.com/

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