2023.03.21 公開
矢野顕子、グランドピアノの音色を弾ませる至福のサウンドを届ける<LIVE the SPEEDSTAR>

矢野顕子<LIVE the SPEEDSTAR>(Photo by AZUSA TAKADA (SOUND SHOOTER))  画像 1/2

矢野顕子が3月18日に千葉・幕張メッセ国際展示場で開催された『ビクターロック祭り』特別版『LIVE the SPEEDSTAR』に出演した。当記事では矢野顕子のライブの模様をお届けする。

ステージ中央に置かれたグランドピアノに向かった矢野顕子。最初に届けられたのは「ラーメンたべたい」。ピアノと1つになり、緩急自在に響かせる歌声に引き込まれずにはいられない。続いて「音楽はおくりもの」。弾かれているピアノが喜んでいるように感じられたのは、きっと気のせいではなかったのだと思う。至福のサウンドで完全に満たされた空間で耳を傾けるのは、何とも言えず素敵な体験であった。

矢野顕子、グランドピアノの音色を弾ませる至福のサウンドを届ける<LIVE the SPEEDSTAR>矢野顕子と岸田繁<LIVE the SPEEDSTAR>(Photo by AZUSA TAKADA (SOUND SHOOTER))  画像 2/2

「幕張メッセ、初めて来ました。SPEEDSTARに拾っていただき、今年で10年になるんだそうです。次にやる曲を書いてくれたのはパット・メセニー。ご本人は歌われないので音域がものすごく広いです(笑)」
ウィットを利かせた紹介を経て披露された「PRAYER」も素晴らしかった。観客たちの心が静かに震えているのが肌で感じられる……。そして「今日、くるりのステージでも演奏されましたが、そんなことは構わず、矢野顕子もこの曲をやります(笑)」という言葉が和やかな笑いを誘ってから届けられたくるりのカバー「ばらの花」。この曲の後に、岸田繁(くるり)がステージに呼び込まれた。「私たちの数多くのヒット曲から厳選したこの曲を(笑)。2人で書いたんでしたっけ?」(矢野)、「はい。漫画喫茶で」(岸田)、「漫画喫茶に行ったのは後にも先にもあれが初めてです」(矢野)、「いい仕事できたかなと」(岸田)、「まだ漫画喫茶ってあるんですか?」(矢野)、「あります。シャワーも浴びれますし」――ほのぼのとしたやり取りの後に披露されたのは、2人の共作で2006年にリリースされた「PRESTO with 岸田繁」。岸田もアコースティックギターを弾きながら歌い、温かなハーモニーを響かせていた。

くるりとの共演や、レイ・ハラカミも加わった3人で歌ったことは過去にあったが、2人きりの共演は、これが初であることが判明。感慨深そうだったMCタイムの後、NYの矢野のスタジオで共作したのだという「おいてくよwith 岸田繁」も2人で披露。そして岸田を送り出した後、「みなさんを国際宇宙ステーションにご招待します。訓練は要りません。ロケットの名前はドラゴン。行きますよ」と言い、歌い始めた「ドラゴンはのぼる」。この曲は3月15日にリリースされた『君に会いたいんだ、とても』に収録されている。2020年11月16日に宇宙に飛び立った野口聡一飛行士に「宇宙で自由に詞を書いて下さい。私が曲をつけます」と矢野が提案したところから制作がスタートし、完成された最新アルバムの曲も聴くことができて嬉しかった。

「ここにいられて嬉しいのでみんなのために歌います」という言葉が添えられて、ラストには「ひとつだけ」が披露された。あんなにも素敵な歌、ピアノに包まれたら、当然ながら心は激しく震えずにはいられない。初めて矢野顕子のライブを観た人もたくさんいたはずだが、心の底から魅了されたのでは? 『LIVE the SPEEDSTAR』の最後を飾るにふさわしい余韻を残した名演であった。

(TEXT by 田中大)




毎年3月に幕張メッセで開催をしている「ビクターロック祭り」。今年はビクターエンタテインメント内のレーベルであるスピードスターレコーズが、設立30周年を記念し、『ビクターロック祭り特別版「LIVE the SPEEDSTAR」』として幕張メッセで開催された。

また、ライブの模様は4月1日16時からU-NEXTにて独占見放題ライブ配信を行う。期間は4月9日までとなる。

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