T-BOLANが、「今回みんなが一番喜ぶことを考えた」シングル全曲を披露するシングル・ベストツアー「T-BOLAN LIVE TOUR 2023-2024 SINGLES 〜波紋〜」を8月19日 三郷市文化会館からスタートさせた。90年代シングル・アルバムのトータルセールスが約1,700万枚を記録した彼らのライブ初日の模様を曲のエピソードと共にお届けする。あのゆるキャラ「ちぃたん」もサプライズ出演で大騒ぎ!
本ツアーに先行して8月16日に「T-BOLAN COMPLETE SINGLES ~SATISFY~」をリリース。「離したくはない」「Bye For Now」「マリア」「じれったい愛」「刹那さを消せやしない」「すれ違いの純情」「LOVE」など、T-BOLANの全シングルを網羅したコンプリート・ベストアルバム。こちらはツアー前に是非とも手に入れたいアイテムである。
今回のシングル・ベストツアーについてボーカルの森友嵐士は「ファンの皆さんにとって、強力に魅力的で今できる限りのアイデアを詰め込んだ“カタチ”を届けたい。今回`90年代に愛された曲たちを一夜に全て体感してもらえるT-BOLANシングル全曲のLIVEツアーを企画させていただきました」とファンが歓喜するコメントを発表。
ツアー初日、開演前のロビーではメンバーの等身大パネルがフォトスポットとして設置するなどメンバープロデュースの様々な企画(詳しくはT-BOLANのHP参照)が三郷市文化会館を訪れたファンを出迎え、長蛇の列が出来ていた。「あの頃、カラオケで歌ったよね」「あなた、必ず『離したくはない』は熱唱してたもんね」という会話を耳にしながら会場に入ると、突然「ボーカルの森友嵐士です」「ギターの五味です」「ベースの上野です」と3人のトークがラジオのように始まった。3人はライブ内でのペンライトを使ったライブの楽しみ方や、様々な企画をレクチャー。森友の「俺たちもこの日を楽しみに待っていました。みん なで楽しもうぜ。エンジョイ!」の声に観客席から拍手が起こる。
そして定刻を過ぎ、オープニングSEと共に幻想的なライトが客席を照らし出す。ライブが始まる高揚感、そして観客の気持ちは否応なく「あの頃」にタイムリープしていく。ライブを待ちきれぬファンの手拍子が次第に大きくなり、サポートメンバーの人時(B)、坪倉唯子(Cho)、小島良喜(Key)、永井利光(Dr)、そして五味孝氏(G)、上野博文(B)、最後に森友嵐士(Vo)がステージに姿を現すと、超満員の観客の声援は頂点に。
シングルベストツアーの1曲目は、筆者も90年代に聴きまくったあの曲である。
このツアーから声出しが可能になり、3年分の思いを声にしてメンバーに伝える観客たち。その声援に頷きながら笑みを浮かべる森友。
90年代の「LIVE HEAVEN」を彷彿させるライティング。五味のアグレッシブなギターの唸りにシンクロするように赤いライトがステージを彩る。
「『T-BOLAN LIVE TOUR 2023-2024 SINGLES 〜波紋〜』」にようこそ!やっとみんなの声が聞けるぜ!」と森友は嬉しそうに話し、一階席、二階席に早速のコール&レスポンス。「今夜はシングル曲、全部持ってきたから楽しんでくれ。どうぞ最後までよろしく」と叫ぶと、印象的なイントロと共に曲がスタート。客席はその期待感にどよめきが広がる。
改めてこの曲の浸透度の高さが確認できる瞬間だ。
シングル全曲披露と銘打ったライブにつき説明不要かもしれないが、ここで幾つか曲に纏わるエピソードを説明しておこう。
誰もが生で聴きたい1曲「離したくはない」。発売されてから30年以上が経過しても決して色褪せない日本の音楽史に燦然と輝く名曲(YouTube回転数は3,000万強)だが、この曲が生まれるまで森友はプロデューサーに一度もデモテープを最後まで聴いてもらえない日々が続いた。つまり“ボツ”。「何が違うのか?」明確な応えを出してくれないプロデューサーに「このデモがダメだったら、もう…」そんな思いで「離したくはない」のデモを聴かせると、初めて最後まで聴いてくれた。
プロデューサーからGO!をもらい、溜まりにたまったT-BOLANエネルギーは爆発していく。
5枚目のシングル「じれったい愛」は、当時プロデューサーとの打合せを「じれったい」気持ちで待っていた森友が、会議室のギター1本で急遽デモを作り上げた曲。
この曲は初のシングルチャートベスト10入りし、バンドの勢いそのままの仕上がり、そして結果に繋がっている。
ミリオンセラーを記録したシングル「Bye For Now」。この曲は信頼していたスタッフから、夢のために仕事を辞めて海外に旅立つことを告白され、そのスタッフのために制作。「for now」は「今だけは」という意味があり、「永遠の別れではない、夢がかなったらまた会えるさ」とスタッフの背中を後押しする森友の優しさが込められた楽曲である。
この日のライブでは、次々と会場全体が歌えるヒットシングルが惜しげもなく連続披露され、「次は何の曲?」「このイントロは!?」「エ?これ何の曲のイントロ…」と、期待通りだったり、予想以上だったり、ツアー初日にもかかわらず完成度の高いライブに目を離せない空間が展開されていた。
シングルのイントロに忠実な曲、その真逆にピアノのみのシンプルな演奏で披露される曲。そんな曲は一瞬たりとも聴き逃すまいと前のめりになる観客に、森友の優しい歌声が響く。
今、リアルタイムを生きるT-BOLANが90年代の曲をライブする。これからライブを見る人は、期待以上の一夜になると確信してツアーに参加してほしい。リアルの森友は歌えることの喜びを全身で体現し、90年代の歌を、あの時以上に自由に歌い上げる。その歌が僕らの心に深く突き刺さるのだ。
ライブでは、アップテンポの曲を連続して演奏するシーンも多用している。そんな時客席はサビでペンライトを振り、気持ち良さそうに体を揺らす。まるで会場全体が巨大なクラブのように変貌したかのような錯覚に陥った。
スポットライトに照らされた上野が、「My life is My way」のイントロを弾き出す。ベースの上野は2015年3月にくも膜下出血で倒れて生死をさまよった。その後、意識を取り戻し、リハビリに励み、奇跡的にステージに立っている(現在は彼単独で「脳フェス※脳卒中体験者とその周囲に向けた活動」に参加したり、バンド以外も精力的に活動)。そして今、リハビリ中に何度も繰り返し弾いたフレーズを観客の前で披露している。これまでの上野はライブ後半に登場し数曲に参加。だが今回は療養から復帰後、「ライブで全曲ベースを弾く」という目標を自ら達成したのだ。
アンコールでは、鳴り止まぬ拍手と声援に応え再びステージに登場したメンバー。「できる限り、みんなと触れ合いたい」と森友はステージを降りて客席へ。「愛のために 愛の中で」を歌いながら握手や抱擁を交わし、待ちに待ったその一瞬一瞬をファンと自らの胸に刻んでいく。
(この模様は「今日の『愛のために 愛の中で』」として、毎公演後にオフィシャルYouTubeチャンネルにアップ:https://t-bolan.bzone.co.jp/special/singles-ripple-/)
興奮と優しさの余韻が残る中、アンコールでもT-BOLAN SINGLESの世界は続き、
「SINGLESツアー初日、最高の力をもらえました。ここから全国駆け抜けて行きます。またどこかの街で会えるのを楽しみにしているよ。最高の夜をサンキュー!」
その森友の言葉から今回のツアーに対する確かな手ごたえが伝わってきた。あの頃へのタイムリープ「T-BOLAN LIVE TOUR 2023-2024 SINGLES 〜波紋〜」は、2024年2月25日の岡山市民会館まで予定されている。