9人組ダンス&ボーカルグループの超特急が、東阪アリーナツアー『T.I.M.E -Truth Identity Making Era-』を12月9・10日に横浜・ぴあアリーナMM、12月23・24日に大阪城ホールで開催した。
2011年12月25日の結成から丸12年というタイミングで行われる今回のライブテーマは、「真のアイデンティティを形成する時代」と訳せるサブタイトルが示す通り、超特急が刻んできた「時」を振り返りつつ、確固たるアイデンティティを構築すること。
メンバーである5号車のユーキがライブ構成・演出の総指揮を執り、各メンバーの個性や持ち味を打ち出すソロパートにバックダンサー、さらにバックバンドの生演奏も加えて、超特急にとって大事な楽曲を現在の9人体制バージョンで大量に初披露。
昨年8月に11号車から14号車の新メンバー4人を迎えたことで完成した、7人のメインダンサー&2人のバックボーカルという唯一無二のスタイルで、超特急の過去と現在、そして未来への道を輝かしく示してみせた。
イベントも含めた精力なライブ活動やプロモーションが功を奏し、着実に知名度を高めてきた2023年の超特急。
その成果は今ツアーの全4公演が、立ち見も含めて完全ソールドアウトという形で現れ、トータルで4万6千人もの8号車が集結した。
そんな熱気あふれる客席に高揚感あふれるオーバーチュアが流れ、ステージ中央の巨大LEDパネル上で時計の針が0時ちょうどを指すと、パネルが2つに割れた中から、きらびやかな純白のセットアップを着た9人が気合満々で登場。
豪快に打ちあがるファイヤーボールに囲まれ、なんと完全未発表の新曲「Countdown」が、ダイナミックに幕開けを告げる。
超特急『T.I.M.E -Truth Identity Making Era-』写真:米山三郎・小坂茂雄 画像 2/5 超特急『T.I.M.E -Truth Identity Making Era-』写真:米山三郎・小坂茂雄 画像 3/5 超特急『T.I.M.E -Truth Identity Making Era-』写真:米山三郎・小坂茂雄 画像 4/5
超特急『T.I.M.E -Truth Identity Making Era-』写真:米山三郎・小坂茂雄 画像 5/5
このツアーのために作られた、けれど事前に一切情報解禁されていなかった楽曲のサプライズ披露に熱狂する8号車も、最終日には早くも音に合わせてコール。
7人のダンサーそれぞれが順にセンターを取って「今」の超特急をアピールしつつ、アリーナ席に突き出たセンターステージに飛び出し、重厚なダンスビートで壮大かつエッジの利いた最新形の超特急を叩きつけて、「We’re superstars No.1」というリリックにふさわしい風格を漂わせる。
7号車タカシ&11号車シューヤのツインボーカルも超高音ファルセットでハーモニーを奏でた終盤、「Nine」から「zero」へのカウントダウンで自信に満ちた顔が1人ずつカメラに抜かれ、この9人では初披露となる初期曲「Secret Express」のイントロが鳴れば、8号車は「Tic Tac Tic Tac Tic Tac!」の大合唱。
その掛け声で12年前へと時計の針を巻き戻しながら、4号車タクヤが担当していたセクシーなキメが13号車のアロハに替わっていたり、メンバー名が組み込まれた歌詞も9人分しっかり盛り込まれていたりと、現在から輝きを増した過去へとタイムリープする熱い展開に8号車の歓声も止まらない。
既存曲も今の9人で新たにビルドアップし、より見応えのあるものにしていく――そんな姿勢は以降のパフォーマンスからも明らかだった。
ここでソロパートの先陣を切ったのが、ダンスリーダーでもある5号車のユーキ。
黒づくめのバックダンサー6名を従え、自身のセンター曲「Play Back」をサンプリングしたダンストラックで表情豊かに躍動する。
時を刻む音に合わせてセンターステージへと進み、8人と合流してからは、これまた9人では初となるエレクトロダンス曲「Time Wave」を披露。
後方に控えるボーカル2人がオートチューンの利いた歌声で淡々とリズムを刻み、前方のダンサーが感情を排した無機質な表情とメカニカルな動きで客席のペンライトを揺らすという構図は、まさしく「メインダンサー&バックボーカル」ならではのものだ。
それを円形のステージで次々に向きを変えながら展開して、360度の8号車をサイバーな異世界へと誘っていくのだから、まったく目が離せない。
こうしてセットリストの合間に仕込まれたソロパートが、メンバーの個性を輝かせると同時に、ドラマティックな楽曲導入を果たしていたのも、今回のツアーの大きな見どころ。
今度はバックダンサーを引き連れた12号車のマサヒロが、見事なボディコントロールでニュアンスの利いたダンスパフォーマンスをブチかまし、ジャケットを肩からすべらせて舌を出すという挑発的な仕草から、3月に発表した最新アルバム『B9』の2曲へとつないでみせる。
タカシ&シューヤの超絶ハイトーン歌唱と、ステージ上段で君臨するマサヒロを中心にしたマッシブなダンスで圧倒する「KNOCK U DOWN」に、LEDパネル上のシルエットが艶めかしい歌声と煽情的な動きを際立たせる「MORA MORA」と、彼らが2023年のテーマに掲げていた「Cool&Stylish」を高濃度で放てば場内は拍手の嵐。
久々お目見えの懐かしい楽曲に現編成となっての新楽曲、初代リーダーとして超特急を守り続けてきたユーキに、昨年加入ながら超特急のダンスを引っ張るマサヒロと、原点と新風を序盤から巧みに織り交ぜて確かな進化を示していく。
公演を追うごとに、MCもリラックスモードで楽しいものに。
大阪1日目では「好きっちゃ」(12号車マサヒロ)、「好きったい」(14号車ハル)と西日本出身メンバーが方言で愛を告げたのにつられ、大阪出身のタカシが今夏の『EBiDAN THE LIVE』で披露した西日本ユニット曲「青春~珍道中~」を「めっちゃむちゃホンマ好きやで」と歌い出す場面もあった。
また、奇数号車のトークでは、お風呂で歌っていたシューヤの声が隣で入浴中のユーキやタカシの元にも換気扇を伝って届いたこと、ユーキが部屋の鍵を失くしたところにタクヤが超ハイテンションでやってきたことなど、大阪のホテルでのエピソードを公開。
タクヤいわく「チーム可愛い」の偶数号車4人も大阪公演前日、珍しく9人全員でラーメン食べに行ったと明かした。
また、ステージ真横の端から端まで満杯の客席に「初乗車(=超特急ライブに初参加)の人!」と問いかければ、どの公演でも想定を超える数の手があがって、8号車の裾野の広がりを実感させられる。
そんな超特急初心者をも圧倒するクオリティの高さとスピード感を併せ持ったパフォーマンスは、その後も一貫。
13号車アロハのターンでは、サイケデリックなウオールアートを背に、バックダンサーズと共に陽キャな彼らしいストリートスタイルのダンスで魅せ、壇上からバク転で着地して8号車を沸かせる。
そこで「一緒にクラップしましょう!」と誘ってなだれ込んだ「DJ Dominator」からは、現体制バージョンを立て続けにお披露目。
モノトーン衣装に着替えた9人がミラーボールの光の下、ディスコソウルなサウンドに乗ってグルーヴィーにステップを踏み、ボーカル組もファルセットやフェイクを笑顔で自在に操っていく。
だが、次の瞬間には真顔で「We Can Do IT!」がドロップされて客席は沸騰!
危険な色香を振りまく人気ダンスチューンで花道を進みながら、全方位に向けて殺傷力の高いアクションを放ち、メンバー同士で互いの肌をなぞる濃密な振りつけで8号車を興奮の坩堝へと叩き込む。
その中心でニヤリと唇をなぞって8号車を悩殺した2号車カイは、バックダンサーズと軽快にシンクロしながら、ベンチに座ったタカシと「Chill out@JP」をデュエット。
華やかな夜景のネオンをバックに艶っぽい色気を振りまき、ソファやフロアスタンドといった小道具も活用して、大人びた持ち味に似合う小粋な都会のムードで8号車の心を躍らせる。
穏やかにチルアウトした空気感を夜の静けさへと導くように、ここからはアコースティックギターとキーボードの生演奏で、ボーカルの2人がそれぞれソロ歌唱。
まずは11号車のシューヤが、透明感あふれる歌声に切なさ滲ませ、過去の喪失に想いを馳せる「refrain」を熱く歌い上げると、場内からは波のような拍手が湧く。
7号車のタカシは、惑いながら歩んできた自身のリアルな心情を「小さな光」の歌詞に重ねて、緩急あるエモーショナルな歌唱で「もう大丈夫」と微笑み、8号車の胸を濡らした。
共に過去を振り返る物語を備えたバラードで、それぞれ視覚的パフォーマンスに頼らず、歌声だけでオーディエンスの心をガッチリとつかんだ2人。
自身が常々口にしているように、まさしく彼らは「最強のツインボーカル」への道の途上にある。
そんな2人が共に歌うことで、超特急の歌は飛躍的に彩り豊かなものに。
フェイクやファルセットといったアレンジの自由度が増して、その瞬間の想いが乗りやすくなり、より曲の世界に浸れるようになった場面が今ツアーでは何度もあった。
こうしてステージに灯った小さな光は、続く「Starlight」で大きな光へと広がっていく。
超特急として活動する彼ら自身の想いとリンクして、希望の光に「昨日より近づきたい」と歌うこの曲も、9人で披露するのは今ツアーが初。
ステージ一面に広がる星空と生演奏をバックに、ツインボーカルの清らかなハーモニーと、彼らの心象風景を情感豊かに写し取った振り付けと表情が、「どんなに時が過ぎていっても」「同じヒカリを目指す」というリリックを観る者の胸に深く沁み込ませる。
そして時を刻む音が鳴り響き、映し出された時計の針が8時を示せば、今度は8号車の出番。
「Starlight」と同じく「時」をモチーフに、変わることのない想いを綴ったラブソング「Billion Beats」を声出し解禁後に初めて贈り、「この時間をみなさんと共有したいです。一緒に歌いましょう」とタカシが告げて、8号車の大合唱を巻き起こした。
その美しい歌声に、タクヤは目を潤ませて「ありがとう!」と泣き笑い。
「時」にまつわる楽曲を並べたブロックは、ユーキいわく「結成12周年から13年目へと向かう超特急を見立てて『T.I.M.E』と名付けた」という本ツアーの、いわば肝とも言える部分で、大きな感動を巻き起こすのも当然だろう。
さらに「サブタイトルには『個性の確立』という意味があるので、メンバー1人ひとりの最高の個性がギュッと集まった、新しい超特急を感じてほしい」とユーキは続け、衣装のプロデュースをタクヤと共に受け持ったカイも「ユーキの演出に沿って衣装を考えたので、衣装からのメッセージもある」と教えてくれた。
その意図を示すように、真っ白で始まった衣装はモノトーンから、ここで黒へとチェンジ。
照明効果による色鮮やかなシルエットと、激しくもチャーミングな舞いで魅せるタクヤのダンスソロを導入に、彼がセンターに立つ「LessonⅡ」では、歌劇『カルメン』のメロディを引用したスリリングなボーカルと妖艶なダンスで、黒衣装に似合うシックな物語を描き出していく。
しかし、直後「8号車!」という14号車・ハルの声が映像の中から轟けば空気は一変。
「夏、秋、冬…?」といったダジャレで満場の「ハル!」コールを招き、着替えて登場してからは女性アイドル並みの可愛いキメ顔で場内を沸かせたかと思いきや、「今日はテンション上がっててすごいから! 何するかわかんないからね!」と雄叫びを上げて、鉄板曲「バッタマン」でセンターステージへと全力疾走するのだから仰天だ。
その後も倒立して「8号車!」と叫んだり、花道を前転で転がったり、大阪では頬でたこ焼きを作ったりと、グループ最年少の18歳という若さを大爆発。
その凄まじい勢いにメンバーも「最高だよ!」と声を漏らす。
9人+8号車カラーの10色で彩られ、奇数号車と偶数号車で模様や色の置き方を絶妙に変えるという、にぎやかな総柄衣装を体現するかのようなお祭り騒ぎは、やがて「My Buddy」で温かな一体感へと昇華。
満面の笑顔やキス顔、ふくれっ面といったキュートな表情をプレゼントし、曲中では6人のバックダンサーも紹介して、最後はカメラに抜かれたアロハのウインクが黄色い悲鳴の嵐を吹かせた。
8号車との一体感を高めていくクライマックスで、さらなる熱狂を呼ぶべく、ソロパートのトリを飾ったのは、2013年よりリーダーを務める3号車のリョウガ。
スポットライトを浴びてダンスをキメようとしたところで照明が消えたり、マイクがオフになったりとトラブルが続いて、電力不足を解消すべく自転車発電に挑んで感電するというコミカルな小芝居も、陰キャが十八番の彼ならではのものだ。
そこから「充電完了!」とスタートしたのは、これまた9人での初披露となる「Believe×Believe」。
白目を剥いて感電ダンスを繰り出すエキセントリックなアクションに全員が全力で挑み、さらに「お楽しみはこれからだ!」(リョウガ)と、無敵の鉄板曲「超えてアバンチュール」を投下する。
ファイヤーボールや火花がド派手に打ちあがって心身両面の温度を上げるなか、変顔を炸裂させたり全力でジャンプしたりと、それまで提示してきた隙のない「Cool & Stylish」をブチ壊すカオティックなパフォーマンスもまた、超特急の確たるアイデンティティ。
「頭、取れるまで振れ!」というリョウガの煽りに応え、ペンライトごとヘッドバンギングする8号車に9人のテンションも爆上がり、ボーカル組の歌も半ばシャウトに。だが最大のサプライズは、その先に残されていた。
再び時を巻き戻して、LEDビジョンには2023年を月ごとに振り返るオフショットや動画が。
そして「Lazt Song」の文字が浮かび、打ち鳴らされるクラップ音と共に9人が現れ、床を叩いて這いつくばる特徴的な振り付けから「Survivor」が披露されると、意外過ぎる選曲に場内は騒然となる。
数年ぶりにセットリスト入りした1stアルバム収録曲は、もともと初期のリリースイベントで入場曲として使われていたBGMに歌詞をつけたものであり、いわば超特急の歴史と共に在った曲。
そんな意義深いナンバーの9人バージョンは、アロハ、マサヒロ、ハルと、新たに加わったメインダンサーを曲始まりからフィーチャーして、強く「新生」を印象付けるものとなった。
ラップやフェイクが交錯するボーカルは切れ味鋭く、戦いへの決意を熱く映し出し、握った拳を振り上げる力強いダンスも俄然迫力を増して、オーディエンスの目を釘付けにする。
難度の高いアクロバットで宙を舞うユーキを筆頭に、9人の射貫くような鋭い視線も、己のイメージカラーのジャケットをまとったビジュアルと相まって「Truth Identity=真の自我」の確立に対する強い意志を提示。
「くじけそうなときもある それでも生き抜いてく」というリリックは、何があろうと突き進んでいくという現在の彼らが持つ信念と重なり、「僕らだけ見て」と目を逸らすことを許さない。
超特急の「時」を綴った物語を締めくくる曲として、この曲が選ばれた理由はそこにある。
最後は時計の針が同じ位置に戻るかのごとく、9人がライブ開演時と同じポジションについて本編は終幕。
彼らが向こうに消えたLEDパネル上では時計が1時を指し、「Go to the 13 years」というメッセージが浮かび上がった。
時計の針が一周しても、それはまったく同じ時間に戻ってきたわけではない。
12時を超えた1時――つまり13時という新たな一歩を刻んでいくということであり、12周年から13年目を迎えた超特急にもまったく同じことが言えるのだ。
すべての演出に意味があり、仕掛けがある――そんなユーキのこだわりが詰まった本編から一転、「超特急!」コールに呼ばれてのアンコールでは、なんと日替わり曲でメンバーが客席に突撃。
横浜公演の初日は「激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームわ~るど」で、なぜかモデルウォークごっこをし、U-NEXTの生配信が入っていた2日目は「Call My Name」でカメラにも8号車にも笑顔で手を振る。
横浜の2日間は安全上アリーナ客席にしか行けなかったため、お詫びにスタンド席の各公演100名にメッセージカードをプレゼントする粋な計らいもあり、対する大阪公演では2階スタンド席からメンバーが登場。
1日目の「SAY NO」ではアロハが「もっと腹から声出せ!」と鬼軍曹化して8号車を煽りまくり、最終日の「走れ!!!!超特急」では2階席通路でメンバー同士の電車ごっこをして8号車を歓喜させる。
続いて、11月29日に発売されたライブBlu-rayのファンクラブ会員購入特典CDに収録されていた最新曲「Rail to Dream~唯一無二番線出発進行です~」もお披露目。
「激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームわ~るど」の「兄弟楽曲」として作られただけあり、曲始まりのドラム音とエキセントリックな曲調は共通ながら、「激おこ」とは反対に怒りではなく幸せをまき散らしていくのがミソだ。
事前にコールレクチャー動画も公開されていたため、初日から「せーの、超特急!」と8号車のコールも大音量で飛び、リリックには「変幻自在」「全力変顔」といった彼ら自身を表すワードも。
12年の歴史を「泣き笑い歌い踊り紡いできたストーリー」というフレーズで表し、「僕らを僕らでいさせてくれてありがとう」と8号車への感謝も乗せ、タカシとシューヤは顔を見合わせて「誰も見たことのない未来へ今日も走りだす」と希望に満ちた声音で歌い上げる。
最後は「君の笑顔が終着駅」という超特急のモットーをリーダーが告げて、全員で超特急ポーズ。
「みなさんと一緒に育てていきたい」というリョウガの言葉通り、この多幸感いっぱいのアッパーチューンは超特急の新たなアンセムとなるに違いない。
ここで各メンバーが気持ちを伝えるが、普段は2号車のカイから号車順に行われるところ、最終日は逆号車順で行われた。
公演のたびに「このライブの景色が世界で一番好き!」と主張してきた14号車のハルは「みんなの笑顔を見るたびに僕ら頑張ってます。生まれ変わったらまた自分になりたいなと思いました」と告げ、13号車のアロハは「この1年いろんな経験をさせてもらって、いろいろ変わったなと感じることがあったけれど、唯一変わっていないのは1桁号車、そして今いるメンバーへのリスペクト。おかげで僕もすごく成長できるし、まだまだ上を目指せるなって感じるツアーでした」と話す。
8号車のみならず、常にスタッフへの気遣いを忘れない12号車マサヒロは「今日も200人近くのスタッフの力を借りていることを知って、感謝の気持ちが強くなりました。9人だけでライブは絶対できないので、スタッフの9号車も含めて走り続けていきたいです」と改めて表明。
前日に「俺ら超特急って、マジでイカしてんなって最近すごく思ってますと力を込めた11号車のシューヤは、「タカシが『シューくんがいなくなったらどうしよう』って言ってくれてたって聞いて、俺、泣いちゃった。こうして超特急をずっと守って、歌ってきてくれたタカシくんとは、俺が死ぬまで歌い続けたいので、これからもよろしく!」とタカシにハグし、8号車の感涙を誘った。
その7号車タカシは「今年は語り切れないほどの経験や挑戦をして、それを乗り越えられたのは8号車の皆さんとメンバーのおかげ」と話した上で、「今年はこれまでできなかったことも動き出してる気がして、来年もっといろんな景色を見せれたらいいなって思ってます。今、とても来年が楽しみです」と嬉しい言葉をくれた。
このツアーの構成と演出を一手に担った5号車ユーキは「自分でも自信持てるライブをやってこれたんじゃないかなって思う」と胸を張り、徳島から祖母が見に来ていることを明かして「いつまで僕が輝いてる姿を見せられるかなって思ったら……しっかりこれから生きてこうって思うんです。笑顔で悔いなくこの世を去っていけるくらいに! 人間いつ死んでもおかしくないですから、この時間を悔いなく笑顔で楽しんでもらえたらホントに嬉しいです」と感極まる。
そんな彼に「今日この場を借りて」と、サプライズで感謝を告げたのは4号車のタクヤ。
「今回のライブ、すごく良かったなぁと思ってます。ユーキの創るライブでパフォーマンスするのがすごく幸せで楽しい。この数ヶ月いろんなものと戦ってる姿をたくさん見てきて、こうやって無事に終えられたから、本当にユーキにはお疲れさまと伝えたいです」とユーキを驚かせた。
これまで8号車への「好き」を届け続けてきた2号車カイは、声出しが解禁された今春の『B9』ツアー初日で涙を見せてしまったことに触れ、「あのときは「Burn!」で感情があふれ出したけど、本当は1曲目の「MORA MORA」で泣きそうだった」と告白。
「人の心が動いて震えるときって状況や曲調は関係ないなって思ったんです。今回のリハーサルでも、ユーキのソロダンスパートを見て、俺、泣きそうになっちゃって! これがメインダンサーなんだなぁって誇らしく思うと同時に、12年経ってもメンバーに感動できることが嬉しかった。2024年も8号車の皆さまと手を取り合って進んでいきたいと思っております」と、2023年を振り返った。
普段は茶化しがちなMCをする3号車のリョウガも「もし僕がタイムマシンを手に入れたとしても絶対に乗らない。過去を振り返って反省することがあったとしても、後悔はしてないですし、その過去があったから、今、未来があり続けるので」と真顔で断言。
そして「生き物には生があれば死があるということで、もし僕が生まれ変わったとしても、やっぱり超特急のリョウガになりたい。このメンバーや8号車に会いたいし、同じ人生を歩みたいと思えるほどの貴重な時間を僕は体験してるんだなぁと思いました」とハルの言葉にも通じる話をして、メンバーの気持ちが繋がっていることを証明した。
そこから「楽しい時間もあっという間に過ぎていくものですね……残り1曲となりました!」と告げた彼に、「イエーイ!」と大きな歓声が返るのも、「楽しむことは今しかできないから、後悔しないように楽しもう」という超特急スピリッツが8号車に根づいている証。
つまり彼らは流れゆく「時」というものの重要性を、とうの昔から理解していたのだ。
「今というこの時間を大切に思いながら、そして13年目も元気に送れるように、そんな気持ちを込めて、この曲を披露させていただきます。聞いてください」というタカシの言葉から贈られたラストソングは「Synchronism」。
超特急の歴史上、常に大事な場面で歌われてきたハートフルな楽曲を、優しく語りかけるようなボーカルから初めて9人で届け、センターステージでは全員で肩を組み、全方位の8号車に「ありがとう!」(横浜)/「おおきに!」(大阪初日)/大好き!(最終日)と感謝する。
全員が1つひとつの動きと声に「同じ夢を見よう」という想いを込め、タカシは 「Number One Two Three Four Five My Six sense to you」と、高音域のCメロを笑顔で難なくカウントアップして、カウントダウンで始まった物語を見事にエンディングへと帰結。「みんな一緒に」というリョウガの号令で8号車が一斉にサビの振りをシンクロさせると金テープが発射して、超特急の「時」をたどるツアーのフィナーレを美しく飾った。
さらに、最終日には「8号車そんなもんか! 行くぜ!」とタカシが立ち上がり、禁断の「Party Maker」を9人バージョンで初披露。
並んだパイプ椅子の周りでTシャツをかぶってうつむくヤル気ゼロのメンバーのうち、まずはシューヤを覚醒させて2人で歌い始めると、ダンサーも次々Tシャツを引き千切って8号車を絶叫させる。
椅子に座ったメンバーに抱えられてボーカルが腹筋しながら歌う2番のパートも、タカシはアロハ、シューヤはハルに支えられる2人体制に。
曲中のアクロバットもユーキとアロハのダブルで魅せ、すべてにおいてパワーアップした狂喜乱舞の宴を繰り広げる。
駆け出したセンターステージではペットボトルの水をかぶって肩を組み、同じ体勢でも「Synchronism」とはまったく違う高揚感で8号車のハートを揺さぶりまくり。
ボーカルの2人も朗々と声を振り絞り、ユーキは指で8の字を作って、ありったけの愛を8号車に届けた。
最後に全員並んで後ろを向くと、白いタンクトップの背中に「13年目もよろしく」の文字が。
ステージを去り際に「みんなよいお年を!」と水をかぶったタカシからは、飛躍の2023年を最高の形で締めくくれた充実感があふれていた。
メンバーが消えても歓声と拍手が鳴りやまない客席に、来年春のホールツアーも映像で告知。
4月20・21日のJ:COMホール八王子皮切りに、全国9箇所15公演を回るツアーのタイトルは『Rail is Beautiful』で、タイトルを考案したユーキいわく「美に特化したツアーで、僕たちでしか出せない超特急の儚さや美を届けたい」とのことだ。
レトロクラシックなスーツに身を包み、花に囲まれたメンバーの新ビジュアルにも歓声は止まらず、新たな時代の到来を予感するに十分。ここから超特急が刻み始める新たな「時」は、さらに大きなうねりと熱い喜びを運んでくれるに違いない。
文:清水素子