日本人ソロ・ロックアーティストとして初めて「BUDOKAN」のステージに立ってから46年。
矢沢永吉が記念すべき150回目の日本武道館公演で魅せた気高きロックンロール!
古稀を超えた今なお眩い輝きを放つレジェンド、矢沢永吉。
歌謡曲とフォークソング全盛だったこの国の音楽シーンに「日本語のロック」という風穴をぶち開けた後も、半世紀以上にわたり最前線で活動を重ね、最高峰として君臨している。
1975年のソロデビュー後、初めて日本武道館で公演を行なったのは、1977年8月26日のこと。
かつて海外アーティストの「来日公演」の定番だった「BUDOKAN」は、今では彼にとってホームグラウンドとなっている。
そして、2023年12月14日。
前人未到の150回目の武道館公演が開催された。
開演を待ち切れない大観衆の「永ちゃん」コールが響き渡る。
定刻を過ぎ場内が暗転すると幕が下り、ステージ後方の巨大LEDスクリーンに「E.YAZAWA」の赤い文字が浮かび上がる。
屈強なバンドが創り上げる絶妙なリズムに乗り、颯爽と舞台に登場する。
1曲目はアンドリュー・ゴールドとの共同プロデュースアルバム『東京ナイト』に収録された「さまよい」。
スタンドマイクが凹むほど激しいマイクターンを決め、軽快に腰をくねらせる。
続いては、挑発的なギターリフも印象的な「ROCK ME TONIGHT」。
レーザービームとツインギターが迸る歌に並走し、客席を熱く煽る。
「PURE GOLD」では、どこまでも艶やかなヴォイスが武道館の天井を突き破るかのようかのようだ。
間奏では、リリース当時にモンキー・パンチが制作したMVが映し出され、「歴史」の一端を垣間見せる。
MCで聴衆の緊張と興奮を軽くほぐした後、スローナンバー「愛はナイフ」へ。
サキソフォーンソロをフィーチャーし、アダルトオリエンテッドな魅力がさく裂する。
自らの主演ドラマ主題歌「アリよさらば」でシャウトを決めた後、最初のハイライトが訪れた。
盟友のジョン・マクフィーが書き下ろし、全米でシングルリリースされた「ROCKIN’ IN MY HEART」だ。
40年以上経っても色褪せることを知らないその姿に、アリーナから1F席・2F席まで会場全体が激しく呼応する。
ロックを満喫した後は、バラードで沁みる番だ。
1995年にリリースしたアルバム『この夜のどこかで』から「KISS YOU」「Love Chain」と2曲のスローソングを繋げる。
極上の矢沢メロディ。
武道館に至福の余韻が残った。
矢沢永吉〈Welcome to Rock’n’Roll〉Photo by HIRO KIMURA 画像 2/4
「小悪魔ハニービー」では、5年振りにツアーに参加したジェフ・ダグモアのパワフルなドラムスが生み出す骨太なグルーヴが、彼の熱唱を際立たせる。
ブルージィな「Risky Love」をはさみ、名バラード「Please, Please, Please」では、満天の星空に包まれたかのような演出も加わり、極上の音楽空間に酔いしれる。
ボルテージが最高潮に達したのは、キャロルの「憎いあの娘」だ。
舞台上手から下手へと軽快に走る姿に、胸が熱くなる。
燃え盛る炎は、衰えることを知らない彼の情熱のようだ。
「ウイスキー・コーク」からアコーステックギターを弾きながら歌った「チャイナタウン」へと、70年代の名曲連発。
込み上げる気持ちを押さえきれずにいる人々の姿が印象的だった。
矢沢永吉〈Welcome to Rock’n’Roll〉Photo by HIRO KIMURA 画像 3/4
矢沢永吉〈Welcome to Rock’n’Roll〉Photo by HIRO KIMURA 画像 4/4
「Anytime Woman」で3人の女性コーラスをフィーチャーし、ロックンロールの真髄を示した後、名曲「ニューグランドホテル」では、再びアダルトに極める。
メンバー紹介を経て、キャロルの「カモン・ベイビー」で導火線に火を点け、王道のロックンロールナンバー「WITHOUT YOU」で本編を歌い切ると、彼は威風堂々とその場を後にした。
収まらないのは、火がついたままの1万4千人だ。
鳴り止まないアンコール。
感情の渦が洪水となって降り注ぐ。
それらすべてを受け止めた「BOSS」が、白いパナマハットと白いスース姿でセンターに戻って来る。
そして、全員が心をひとつに合わせる至福の時間がやってきた。
いまや国民的なアンセムとなった「止まらないHa~Ha」。
スモークがたかれ、色とりどりのタオルの出番を告げる。
さながらそれぞれの人生を祝福しているように、華やかでしなやかで、力強く。
様々な色の「エール」が武道館の宙を舞っていた。
続けざまに放たれた「トラベリン・バス」では、コール&レスポンスが加速度を上げていくかのようだった。
パワフルでストレイトでハートフルな魂の交感。
実に壮観だった。
最後に披露されたのは自らの想いを真っ直ぐに込めた「I AM」。
目を潤ませながら歌い上げ、コンサートを支えたメンバーたちと一礼すると、彼は笑顔でステージを降りて行った。
その表情からは「ありがとう!でも、まだまだ通過点だぜ!」という心意気が伝わって来た。
それがまた素敵だった。
あらゆる偏見に抗いながら切り拓いた「日本語のロック」は、いつしかカルチャーとしてもビジネスとしても確立された。
新しいジェネレーションからも絶大な支持を受ける彼の名は、この国のロック音楽史のトップに刻まれている。
だが、何より凄くて素晴らしいのは、依然として最高の音を鳴らし、最高の歌を聴かせ、最高のステージを魅せてくれることだ。
「still rock singer.」とは、「矢沢語録」のひとつでもあるが、ロックという衝動から始まり、転がり続ける生き様=ロックンロールを体現するその姿は神々しい程だ。
時代を超えて、矢沢永吉は僕らに気高い姿を示してくれている。
なお、WOWOWではこの記念すべき150回目の日本武道館公演を生中継したが、WOWOWオンデマンドでは2024年1月13日(土)午後11:59までアーカイブ配信が行なわれており、さらに2024年2月11日(日・祝)午後7:45からはリピート放送・配信も決定した。
さらに、現在展開中の特集『WOWOW×矢沢永吉 武道館ライブ150回記念スペシャル」最終月となる2024年6月には、「矢沢永吉 Music Video Selection 2024」の放送・配信も決定!
引き続きWOWOWで矢沢永吉の偉業を、時間の流れとともに改めて体感していただきたい。