宇徳敬子が 2 月 24 日、神田明神ホールでソロコンサート
『宇徳敬子 Concert 2024 輝きましょう、羽ばたきましょう。 〜solo début 30th Anniversary〜』を開催した。
タイトルに掲げられているように彼女は、ソロデビュー30 周年記念イヤーの真っ只中。
「2024 年の幕開けは、このソロコンサートとなる。」
開演予定時間の 18 時 30 分、客席の電気が消え、
ステージ奥のスクリーンに30th Anniversaryを告げる煌びやかな映像が流れる。
UK バンドの面々に続いて、まだ真っ暗な中、
宇徳敬子が姿を現し柔らかなボーカルを響かせ始める。
照明が灯り、黒のトップスに赤いスカート姿の彼女を浮かび上がらせた。
オープニングナンバーは「I can feel〜世界でいちばん君が光ってる〜」だ。
負けを知るのも楽しい、歓びもあるから、と 1 度だけのこの人生を透明な
歌声で穏やかに讃え、サビでバンドのアンサンブルと歌はグッと力を帯びた。
そして、この日は多くのスペシャルな試みが披露された。
Mi-Ke メドレーは、ソロ活動の前に組んでいた Mi-Ke がリリースした
7 枚のアルバムからの曲で編み直した神田明神ホールバージョン。
Mi-Ke でカヴァーした、舘ひろしの「朝まで踊ろう」、
キャロルの「ヘイ・タクシー」に「ファンキー ・モンキー・ベイビー」、
さらには、矢沢永吉の「時間よ止まれ」を歌う。
さらに、コンサート開催の出身のアーティストのカヴァーとして、山口百恵メドレーをプレイ。
低音を主とした歌に凜とした佇まいと芯の通った女性の格好良さが宿り、
さらに宇徳ならではのしなやかさが乗せられていた。
「いい日旅立ち」を歌い終えた宇徳が去ったステージでは、
降りてきたスクリーンにソロでリリースしてきた作品が順に映し出されている。
そして、ブルーの衣装で再び登場した宇徳は初となるソロのシングル曲メドレーを聴かせる。
矢継ぎ早に届く至極のメロディと心揺さぶる歌詞を味わいながら、
改めて彼女が残してきたものに想いを馳せる。新鮮さを求められ、
流行廃りのスピードが速い音楽シーンにあって、30 年間かけてじっくりと楽曲を届け、
大切に歌い続けてきた宇徳敬子。これが彼女の人生を歩くペースであり、
届くありのままの音楽は受けとったリスナーの心の中心でいつまでも風化することない宝物、
力の源泉になっている。それはとても素敵なことだ、と思う。
続いた「Good-by morning」。
ソロデビュー直前に近藤房之助とのコラボレーションで形にし、
2023 年 11 月には中西圭三と歌ったバージョンをデジタル配信したこの楽曲を
今夜はソロで、今のフィーリングで表現される。
例えば、中西圭三とのこの曲は、心通わせた者と共に新しい 1 歩を踏み出す
エネルギーを感じたが、ステージから届く歌は、ひとり自分自身と静かに対峙し、
ネガティブな想いや思い出を振り切って新しい朝へと向かう意志に溢れていた。
続いた本編ラストの「One More Chance」は演奏と歌が開けていて、
『ムダなモノは 何ひとつない』。飛び込んでくる言葉が先へ進む力と自信を注いでくれる。
『Lalala......』と オーディエンスが想いを重ねながら歌い、高く上げた右手を左右に振る。
オープニングから温めてきた気持ちがしっかりと合わさったその光景は
とてもピースフルで未来を照らす希望の光に満ちていた。
アンコール。奏でられた「幸せの予感」は、キーボードと観客のハンドクラップが
作り出すアンサンブルを伴奏に宇徳が歌い、幸福感が神田明神ホールに広がる。
そしてこの日のラストを飾ったのはアニメ『名探偵コナン』のエンディングテーマとして
流れた「光と影のロマン」だった。
宇徳のパッション剥き出しの歌がエネルギーを燃焼して生きる姿を想わせる。
日々の中で押し寄せる光と影、幸福な時間と苦しみの波を越えていくパワーを注いでくれた。
2024 年をこの日のコンサートで踏み出した宇徳敬子は、
30 周年の最終日となる 8 月 3 日にソロコンサートを行なうことを発表した。
また、30 周年セルフカヴァーアルバムリリースも予定しているという。
彼女らしく歩む 30 周年とその先、音楽表現は続いていく。
文・大西智之
カメラマン・木村直軌