今年、デビュー20周年を迎えたDragon Ash。6月8日(木)にスタートした約3年ぶりとなるアルバムツアー『Dragonash Live Tour 2017 MAJESTIC』は、来年1月28日(日)に行われる横浜アリーナでの公演を前に、全国30か所31公演、怒涛のライヴハウスツアーファイナルとなるZEPP Tokyo公演を10月3日(火)に開催した。
Dragon Ash(Photo by 後藤倫人 / GOTO MICHITO) 画像 2/10
BOTSのスクラッチが鳴り響くと、満杯の場内から怒涛のような歓声が沸き起こる。デビュー20周年を祝うツアーであり、全国30か所、計31公演のライヴハウスをめぐる約4か月の旅を締めくくる一夜となったこの日の公演は完全ソールドアウト。
まさに並々ならぬ期待と熱気に包まれた会場に最初に放たれたのは、アルバム『MAJESTIC』の冒頭を飾る「Stardust」だ。HIROKIのギターソロを合図に、場内のテンションが一気に頂点に達する。TV出演の際もライヴハウスでの熱気そのままに見せつけた「Mix it Up」が追い討ちをかけると、満杯のフロアは一瞬でモッシュとダイブの坩堝に。
続く「Pulse」は敬愛するTHE MAD CAPSULE MARKETSのカバー。ツアー初日から観客が大熱唱する盛り上がりを見せていたが、この日はもはや、ライヴが始まってまだ10分足らずという事実が信じられないくらいの盛り上がりぶり。デビュー20周年の節目に挑んだ、怒涛のライヴハウスツアーは、数万人規模の大型フェスで引っ張りだこのライヴモンスター・バンドをまたもや次のレベルへと押し上げたようだ。
その事実を目の当たりにしたのが、Kjも参加する「東北ライヴハウス大作戦」のタオルを掲げるオーディエンスの姿も見えた「光りの街」と、「Ode to Joy」だった。被災地の子供たちとの出会いから生まれた「光りの街」は、ツアーの日々を経てよりいっそうの優しさと希望に満ち溢れたライヴチューンへと進化。「Ode to Joy」ではダンサーのDRI-Vがグラフィック・ポイで光のジャグリングを披露するなど、ダンサー陣のいるバンドだからこその表現で観客を楽しませる。
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ステージに光の柱が現れた「Circle」、「Headbang」とアグレッシヴなライヴ賛歌が続くゾーンでは、フロアに大きなモッシュピットが出現。BOTSがさらに、「最後だぞー!」と叫びスクラッチで場内を煽ると、クラウドサーファーが大量発生。
「かかってこいやー!」というドラムの桜井の声も加わり、もはやカオス状態のフロアに畳み掛けるように「Faceless」、「The Live」とアッパーチューンが続く。
場内の至るところでヘドバンも繰り広げられた「The Live」では、オーディエンスの力強いシンガロングが響き渡る。音楽に込められた熱と思い。それがしっかりと伝わっていることを実感するこの幸せな場面こそ、ほとんど観客のいないステージに立っていた20年前のDragon Ashが夢見ていた光景そのものだ。
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20年を共に歩んできたファンへの感謝が込められた「Beside You」の後に披露された「静かな日々の階段を」では、ハンドマイクで歌うKjが、言葉の一つ一つを観客に語りかけるように歌う。そして、フリースタイルの英語ラップに続けて、盟友、RIP SLYMEの「ONE」のバースを披露。TMCやDSMといったイベントを開催し、フィーチャリングやコラボを通してさまざまなメンツと競演してきたDragon Ashの軌跡を垣間見たその瞬間、フロアから大歓声があがる。
「ライヴハウスは自由な場所だ。全部解き放ってくれ!」
本編のラスト曲「A Hundred Emotions」が始まる直前、Kjが言う。ジャンルや常識の壁を超え続けた革命精神と、どんな時も前を向く力をくれた音楽と歌。20年間、オーディエンスにとってDragon Ashはずっと人生の糧となる存在であり、ヒーローであり続けてきた。その事実は、Dragon Ash自身にとっても大きな支えであり、誇りだ。
だからこそ彼らは、それぞれの悩みや事情をほんのひと時忘れ、共に喜びと自由を分かち合えるライヴという場所を何よりも大切にしてきた。ファンもそれをよく知っている。だからこそ、Dragon Ashのオーディエンスにはモッシュやダイヴに対するマナーと思いやりを心得た人が多い。巻き込まれたくないなら、後方でじっくり楽しむのもありだ。とかく禁止されがちなダイヴやモッシュだが、すべては明日を生きるためのつかの間の自由であり、大切な糧なのだ。
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「20年はあっという間。30年、40年後はHIROKIさんが杖ついてるかもしれないけど(笑)、JESSEのお父さんは今もかっこいいし、俺らも今日みたいなライヴをずっと長く続けていけたらと思います」
アンコールで登場したドラムの桜井が客席に向かって言う。「ファイナルの横浜アリーナでは今着てる服(今回のツアーのユニフォーム)を客席に投げる」と滅多にMCをしないBOTSが言うと、「いろんな人に支えられた、修行のようなツアーでした」とダンサーのATSUSHI、「改めてみんなに支えられてるなと思いました」とDRI-Vも続ける。
「暗い話をするつもりじゃないけど……20周年は馬場育三と迎えるべきだと思ってるけど、バンドが続くことが一番大事!」
今回のツアー中も赤青のIKÜZÖNEシャツをずっと傍らに飾って演奏していたKenKenが言う。彼の言葉に応えるように、「最年長の俺がぶっ倒れるまでやれると思う。みんなの10年後が今の俺だから、まだまだやれる」とHIROKI。
そしてKjのMC代わりに、「HOT CAKE」、観客のシンガロングに心震えた「Iceman」と「Lily」が続けて披露された後、桜井の力強いドラムで始まる「Curtain Call」が最後に披露される。悲しみに別れを告げ、前に進む決意を歌い奏でるエモーショナルで美しい1曲だ。
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「ありがとうございました!」
Kjがマイクを通さない肉声でそう告げた後、BOTSがスリップマットを客席に投げ入れたり、桜井がじゃんけんに勝った観客にサイン入りのドラム・ヘッドをプレゼントしたり、KenKenがIKÜZÖNEシャツを高々と掲げたり、各々が観客と名残りを惜しむ。
「横浜アリーナで待ってますから!」
最後にドラムの桜井がそう叫ぶ。今回のツアー『Dragonash Live Tour 2017 MAJESTIC』のファイナル公演は、来年1月28日(日)に横浜アリーナで開催される。Dragon Ashが横浜アリーナのステージに立つのは、1999年に行われた『Dragon Ash Tour Freedom of Expression』のファイナル以来、約18年ぶりのこと。
今、Dragon Ashは、あの時よりもはるかに研ぎ澄まされた言葉と音を歌い奏で、比較にならないほど激しくエモーショナルなライヴを繰り広げている。さまざまな出来事を乗り越え、今回のライヴハウスツアー31公演を経て、音も魂も一層強靭になった男たちが新たに挑むDA Showは、もはや18年前とは異次元のものとなるだろう。
「楽しかった~!」
終演後、観客たちが笑顔でそう話しているのが聞こえる。大人になっても、そんな風に無心に楽しめる音を奏で続けるライブモンスター、Dragon Ash。その20周年を締めくくる横浜アリーナでの巨大なロックショウを、ぜひ見逃さないで欲しい。
(取材・文/早川加奈子)