7月20日、X JAPANボーカルのToshlがワンマンライブ『真夏の夜Toshlロック祭り』を赤坂BLITZにて開催した。
弦楽器の調べが流れ、ステージの背景にあるスクリーンに、ドクロが映しだされる。今日のToshlはシルバーに輝くスパンコールのジャケットで登場。
1曲目にスタートしたのは『CRYSTAL ROCK 第一楽章』だ。中央に配置されたドラムセットに座るToshl。ドラムスティックを手に取ると、そのままクロスさせてXの文字をつくった後、自らがドラムを叩き始めた。
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Toshlの歌いながらのドラムプレイにヒートアップするオーディエンス。Toshlはパワフルにドラムを叩き続け、曲のクライマックスでは立ち上がって連打。曲の終盤ではドラムセットをなぎ倒し、マイクスタンドを叩きつけるハイテンションなパフォーマンスで我々を驚かせた。今日はこれからどんなステージが待ち受けているのだろうか。
その曲が終わると、2曲目『Love is MARIA』ではバンドメンバーがステージに歩み出てオーディエンスをあおる。笑顔を見せながら改めて登場するToshl。X JAPANのライブとはまた違い、この日のライブにはパーソナルなステージならではの空気感が流れている。
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「魔夏のロック祭りへようこそー!おまえたちの大好きな肉弾戦だぜ。やるときゃやれよ~」Toshlの叫ぶようなMCで『Sadistic Desire』が始まると、ステージ前は激しいモッシュエリアに。ファンにはたまらないこのナンバーをやられたら、オーディエンスもアイドリングを終え、本気で暴れないわけにはいかないというほどの勢いだ。
『Sadistic Desire』が終わると、Toshlはステージ最前列のオーディエンスにうちわで風を送り「みんな押さないで。一歩ずつ下がって」など気配りをする優しい一面も。次の『JOKER』では、ステージ裾から赤・緑・黄と5つのバルーンが飛び出し、オーディエンスの頭上を跳ねる。Toshlも自らバルーンを掴んで振り回したり、バルーンがステージに戻ってくると客席に蹴り返して応戦。マイクとうちわを手に楽しみながら歌っている様子が、会場全体の雰囲気を和らげ、まさに「ロック祭り」といったお祭りムードが展開される。
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ここで一旦ステージ袖に戻り、ジャケットを脱いで再び現れたToshl。次はアコースティックギターを抱え、20年振りだという『Carry On』を披露。滑らすようにギターを奏でつつ、心地良い音色を楽しませてくれた。続く『Love Dynamics』では、エレキに持ち替え「まだまだ行くぞー!おまえたちの声を聴かせてくれー!」と叫びながら、うねるギターの音色でオーディエンスを盛り上げた。
続く『群青の夕紅れ』では、雄大な曲のテーマに相応しい映像とともに幻想的な空間が生み出された。
ここからはいよいよクライマックスへ突入。「素敵な仲間を呼ぶぜー!」の声でX JAPANのベーシストHEATHが満を持して登場すると、割れんばかりの歓声があがる。ステージに登場するやいなや、Toshlに抱きつくHEATH。HEATHを加えて披露された『武士JAPAN』では、間奏で今回のバンドメンバー紹介もあり、一人ひとりがソロプレイをお披露目。もちろんHEATHもオーディエンスの前でたっぷりとソロ演奏を魅せつけた。
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この日のために選りすぐられ、集結したバンドメンバーも、心地よさそうに自由に音を奏で、互いに向き合ったり並んだりして自身の出す音を楽しみながらセッションを繰り広げていたのが印象的だった。
そして本編ラストを飾ったのは、これも懐かしいX JAPAN初期のナンバー『オルガズム』。と思いきや驚きのサプライズも。「行くぞー!本物のToshl、SaToshl~~~~!」Toshlの原点とも言えるこの曲に、そっくりさんのsaToshlが加わり、会場には大きなどよめきが起きた。この想定外のうれしい誤算にオーディエンスの熱も冷めやらない。
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それにしてもToshlとsaToshlは驚くほど似ている。ルックスや背格好の雰囲気だけでなく、シャウトする声や仕草もToshlなのかsaToshlなのか、ずっと見ていても混乱してくるほど。実際に2人が同じメッセージを叫ぶと一卵性の双子が現れたかのような錯覚に陥った。そんな状況を見越してか、Toshlはニヤけながら一旦ステージから身を引き、saToshlにステージを委ねる場面も。「1階ー!2階ー!アリーナー!」赤坂BLITZにアリーナはないぞと思いつつ、よく見るとシャウトした主はToshlならずsaToshl(笑)。
一方でToshlは再びステージに戻ってきたと思いきや、スモークを噴射する銃を手にステージから降りて客席最前列に乗り出して大暴れだ。こんなシーンもロック祭りならではの1ページ。この夜はToshlにとっても、ファンにとっても、そしてsaToshlにとっても(笑)忘れられない一夜になりそうだ。
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熱が冷めやらないオーディエンスから、どこからともなくアンコールの声が湧き上がる。しばらく経つと、満を持してToshlが再び登場。ステージに姿を現すと、アコースティックギターを手に中央に置かれたチェアに座った。
Toshlの隣にはもうひとり、ギターとバッキングボーカルを務めたCUTTだ。この2人でアコースティックによる生演奏、生では初の演奏だという『Say Anything』を披露。CUTTのヴォーカルを全面にし、Toshlがバックコーラスでしっかり支えるという意外なスタンスで、師弟愛を感じさせるかのようなパフォーマンスを楽しませてくれた。
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アンコール2曲目も20数年振りだというToshlソロ曲『Beautiful Harmony』。ステージの後方スクリーンには歌詞が映し出され、オーディエンスも一緒に歌いながら、曲への想いを巡らしていたことだろう。そして再びバンドメンバーが去ると「感無量です。たくさんの方に感謝の気持ちが湧き上がってきます」とToshlの口からストレートなメッセージが伝えられた。「楽しみにしてる!」「ずっと付いていく!」オーディエンスからもストレートな喜びの声があがり、会場は暖かな雰囲気に包まれた。
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そんな中、本当にラストナンバーとなったのは『雨音』。ひとりステージに立つToshl自らがキーボードを奏で、ささやくようなハスキーボイスで自身のこれまでを振り返るかのように綴る。繊細な音と詞の世界にじっと浸るオーディエンス。そう、この曲はToshlの再生のための大切な曲でもあるのだ。自身が奏でるキーボードの最後の1音まで、噛みしめるかのように丁寧に鳴らし曲を終えると「ありがとうございました」としっかりと感謝の言葉を伝える姿が印象的だった。
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エピローグはHEATHも含めたバンドメンバーが再びステージに登場。Toshlは一人ひとりにハグし、それぞれのメンバーへの感謝の意を伝えていた。ステージの最中も「今年の残りと来年にかけてはいろいろあるよ!」と宣言したToshl。これからも大いに我々を楽しませてくれそうだ。
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(取材/文:大坂晃典 写真:布施和隆)
【真夏の夜 Toshlロック祭り セットリスト】
M1.CRYSTAL ROCK 第一楽章
M2.Love is MARIA
M3.Sadistic Desire
M4.JOKER
M5.Carry On
M6.Love Dynamics
M7.Dear My Friends
M8.群青の夕紅れ
M9.武士JAPAN
M10.オルガズム
EN1.Say Anything
EN2.Beautiful Harmony
EN3.雨音