終わってしまった。毎週金曜夜の楽しみだった『アンナチュラル』が、最後まで「そこを拾うか!」という絶妙な伏線の回収の仕方をして、後味も軽やかに──。
我らが中堂系先生はというと、復讐の焔を静かに燃やして悪徳記者の宍戸(北村有起哉の怪演ぶりもすごかった)を地獄に突き落とそうとするも、〝不条理に巻き込まれた人間が、自分の人生を手放してしまったら負けじゃないんですか?〟という三澄ミコトの心の叫びによって踏みとどまり、負の連鎖を見事に断ち切ってみせた。
『アンナチュラル』©TBS 画像 2/6
が、しかし!
ドラマが鮮やかにしてさわやかなラストを迎えた分、〝中堂さん=井浦新ロス〟に陥った人も数え切れないほどいることだろう。その気持ちはわかる。けれども、東海林のセリフじゃないが、絶望しているヒマはない。ポッカリと空いた心を埋めるには、新たに井浦新を補給することでしか、かなわないのだから。
幸いにも、3月17日から井浦の最新主演映画『ニワトリ★スター』が公開になる。中堂とはうって変わって、この作品で演じる雨屋草太は30代もなかばに差し掛かろうというのに、場末のバーでバイトをしつつ、大麻の売人もどきのような生活をしている、という役どころ。彼は大阪出身の設定なので、劇中では井浦の関西弁をたっぷりと味わうことができる(モノローグもたくさんあるので、井浦の艶やかな声が好きな人にはたまらないかも)。
さて、草太はもう1人の主人公、成田凌が演じる真っ赤なトサカ頭の〝ニワトリ・スター〟こと星野楽人と、「今が楽しければ、まぁ…いいよね」的なその日暮らしを、無為におくっている。が、心の中では「ちゃんとしなくちゃ」と、ダメなりに懸命にもがいてもいる。そのさまを見ていくうちに、妙に2人が愛おしく思えてくるから不思議。何て言うか…「共感」よりも心情を「理解」できるキャラクターの描かれ方がなされているのだ。そういう意味では、〝オトナの青春映画〟と呼ぶのがふさわしいのかもしれない。
何にしても、いい歳をして人生に迷い、悩む草太を、さも等身大で演じてみせる井浦の芝居の振り幅の広さに、あらためて感心させられるはず。本人いわく、「この作品を撮っていた期間は草太として生きる時間が日常で、井浦新としての生活が虚構に逆転するような感覚があった」とのことだが、まさに役とし
て生きたからこその実在感が、そこにはあると言っていいだろう。暴力的な表現があったり、アニメーションが挿入されたりとアヴァンギャルドな映画でもあるけれど、本質は「かけがえのない日々」を描いているので、観れば何かを感じとれるのではないか、と。
©ニワトリ★スター 実行委員会 画像 5/6
余談にして主観ながら、この作品での成田凌はどことなく若き日の窪塚洋介に重なるところがある。この機会に、井浦がコンビを組んだ『ピンポン』(’02年)や『ジ、エクストリーム、スキヤキ』(’13年)を観直してみることを(未見の人には鑑賞を)、オススメしておきたい。
これからの週末は、中堂系に会えない寂しさが募ることだろう。だが、〝中の人〟である井浦新には、何かしらのカタチで触れることができる。だったら、底知れない魅力を持つ「井浦新という沼」の深みにドップリと漬かりつつ、「二匹のカバとして旅を続ける」中堂さんが、いつかまた帰ってくる(※『アンナチュラル』ラストの『Their journey will be continue.』の一文は、いろいろな解釈ができる)のを待とうじゃないか。
(文・平田真人)
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